先月出版記念パーティーを行なった際、ゲストの皆さんからご祝儀などはお気持ちのみをいただき、お受けしない旨を事前に伝えていました。けれど、何かしらのお祝いをしたいと仰ってくださる方のために、代わりとして寄付を募らせていただきました。

アメリカでは浸透して久しい、バースデー・ドネーション(バースデー・ファンドレイジング)。誕生日に、ギフトをもらう代わりに寄付を募ってチャリティーにまとめてドネーションをする行いのことです。誕生日に限らず、結婚式や卒業式など、人生の大きなイベントでも同様のことが行われます。

私もバースデー・ドネーションに参加したことが何度もあります。主催者となる誕生日の方が関心のあるNPO団体をそれぞれ選び、例えばサーフィンが趣味の友人は海をきれいにする活動をしている非営利団体を寄付先に選んでいましたし、ペットを飼っている友人は動物愛護団体を選ぶなど、皆それぞれです。最近では子供の誕生日会でも、誕生日プレゼントは断る代わりに寄付を集めることが多く、さすがに現金の寄付募集は少ないですが、代わりとして絵本という形で集めて図書館に寄付したり、貧困家庭をサポートするNPOのためにオムツやおしりふきなどの必需品を集めて寄付するという、子供の誕生会ならではのバースデー・ドネーションにこれまで参加してきました。ギフトを贈る場合は何にするか迷うし、ギフトなしと書かれていても何となく心苦しいので、寄付という形でお祝いできるのは、参加する側にとってもありがたく、社会に貢献もできるのでまさにWin Winです。

アメリカでバースデー・ファンドレイジングが始まりだしたのはもう10年以上も前で、先駆者の1つといえば、開発途上国に清潔で安全な水を提供する活動をしているNPO、charity: water。2006年の設立時に、創設者本人の誕生日を兼ねてファンドレイジングをしたのが始まりだそうですから、納得です。すでにクラウドファンディングは浸透していましたし、何せ寄付大国で、誕生日に寄付をするという習慣はすでにあったアメリカですから、バースデー・ファンドレイジングもあっという間に広まりました。

今では、charity: waterのようにそれぞれのNPOがバースデー・ファンドレイジングをするためのプラットフォームを多く整えており、また様々なNPOを取りまとめてバースデー・ファンドレイジングのサービスを提供するウェブサイト、例えばNetwork for GoodMightycauseなども数多く存在します。2017年にはFacebookもバースデー・ファンドレイジングを開始し、最初の1年で300億円以上も寄付をしたというからさすがです。

今回私たちが出版を記念してバースデー・ドネーションならぬ出版記念ドネーションをしようと思ったとき、日本にそのプラットフォームが整っているウェブサイトがあまりに少ないことに驚きました。私が見つけられたのは、シンカブルLIFULLソーシャルファンディングの2社だけでした。

今回はシンカブルさんのウェブサイトを利用させていただきましたが、とても簡単に始められ、非常に使いやすかったです。ただキャンペーンを始める前に、またもや寄付文化が小さい日本ならではの問題に直面しました。私たちには、既に寄付をしたいと思っている非営利団体が決まっていました。がしかし、この団体はシンカブルに登録されていなかったので、登録してもらうよう問い合わせたのです。すると何とその回答は、NOでした。耳を疑いました。その理由は「上に稟議を通すのに時間がかかるから」。悲しいほどに情けない、日本らしい対応だと思いました。

何せ日本ではNPO団体がこんな考えですから、個人レベルで、よりよい社会のために、社会に還元するために寄付をするという意識改革をしていかなくてはならないと切実に思ったのでした。そのためにも、出版記念ドネーションをすることに意味があると思いました。

●まず、今回私たちが祝ってもらう立場で言うのも何ですが、友人や知り合いを祝うという気持ちだと、寄付もしやすくなるからです。もちろん、私たちが支援する団体の活動に賛同できない方もいると思いますし、できなければ寄付をする必要も全くありません。けれど例えばその団体が直接寄付を募ってきたところで募金をしようとは思わないかもしれませんが、知り合いが募ることで集まりやすくなります。

●次に、それまで自分はそれほど気にかけていなかったことが、知り合いが気にかけているということで関心をもつきっかけにもなるかもしれないからです。今回私たちが寄付先に選んだのは、社会的養護の必要な子どもたちをサポートしているNPO団体でした。幼児虐待のニュースなどを見て心を痛める方も多いと思いますが、だからといってどこかに寄付をしようという考えにはなかなか結びつきません。そのきっかけを作ることに結びつくかもしれないのです。

●そして最後に、誕生日や記念イベントに寄付を集めるということ自体を知ってもらえる機会になるからです。今回のイベントに参加していただいた方の中から、もしかしたら次の誕生日にバースデー・ドネーションをしようと思う方がいるかもしれません。そしてその誕生日会に参加したゲストがまた別の機会にファンドレイジングをするかもしれません。こんな風に連鎖して、日本の寄付文化を変える一つのきっかけになることを願っているのです。