これまでに、ブランディングについてや、ブランディングご依頼の流れについて紹介してきました。今回は、実際にブランディングをしていく上で私たちが考慮している点、つまりブランディングの要素についてお話したいと思います。

ブランディングについて』の中で触れましたが、HI(NY)では、ブランドの中枢部分をBRAND SYSTEM(ブランド・システム)、そしてこの軸に基づいて制作するウェブサイトやステーショナリー、内装、広告などの諸々の制作物をBRAND COLLATERAL(ブランド・コラテラル)と呼んでいます。

中枢部分であるブランド・システムは、リサーチと分析することでブランドの本質を見極め、クライアントへの丁寧なヒアリングによりクライアントの思いやビジョンを引き出し、それを伝わるように正確にわかりやすく概念化、そして消費者にとって魅力的な形に体現化して、このブランドに関わる人々が正しく理解し共有できる形にしたものです。このブランド・システムを、私たちは大きく2つの項目:ブランドDNAビジュアル・アイデンティティ に分けています。

この2つのうち、ブランドの基礎となるのがブランドDNAブランドDNAを築く際に私たちがその要素として考慮しているものがいくつかあり、プロジェクトの内容によってその要素は変わってくるのですが、今回はその中から3つを紹介します。

ブランド・ストーリー|Brand Story

単なるブランドの歴史やブランドについての説明と思われがちなブランド・ストーリーは、ブランドそのもののアイデンティティを形作る、ブランドにとって最も重要な要素の1つです。ブランド(会社)や商品についてを、物語を語るように人々に伝えることで、興味を持ってもらい、支持してもらい、ファンになってもらいます。

よいブランド・ストーリーは、事実だけを淡々と述べるのではなく、お客さまが心で感じ、インスピレーションになるようなストーリー。そのストーリーを通してお客さまがそのブランドや商品を「経験」するように語りかけるものです。心に訴えかけるためには、人と人との繋がりが必要で、つまり従来の広告文句のような一方的な内容ではなく、人の目線で伝え、そして伝えられた側が感じたり考えたりするスペースがあることが大切です。そうすることで、お客様と見せかけではない本質的な部分での繋がりが生まれます。

インターネットやSNSが普及した現在では、ブランドを成長させる上で上質なコンテンツを作り発信していくことが重要な手段の1つですが、このブランド・ストーリーがしっかりしていると、一貫したコンテンツが作りやすく、お客様にもそのメッセージがより伝わりやすくなります。そしてその一貫した全てのコンテンツが1つの大きなブランド・ストーリーとして形成されるのです。

良い物語は語り継がれます。ストーリーに共感し、実際に商品やサービスを使ってファンになり、そしてその人がそのストーリーを友人や家族に伝える。これが理想的なブランド・ストーリーと言えます。

ブランド・パーソナリティ|Brand Personality

ブランド・ストーリーを「人目線」で伝えるということに繋がってくるブランド・パーソナリティは、まさにブランドを「人」とみなしてその人がどんな人であるのかを考えます。

人は、自分に似た考えを持つ人に親近感を感じ、自分の理想的な存在の人に憧れを抱きます。そのブランドが、消費者にとってどんな存在であるべきかをまず考えます。

次にわかりやすく基準として、そのブランドを象徴するような著名人や歴史上の偉人、映画やアニメのキャラクターなどを選びます。そしてその性格についてわかりやすく文字に起こします。

例えば現在HI(NY) designで進めているビューティー系ブランドのリブランディングを例に挙げると、このブランドは女性による女性のためのブランドで、独立したプロアクティブな女性をターゲットとしており、彼女たちにとってメンターとなるような存在であることが必要だと話し合いました。また、リブランディングによってより若いミレニアル世代にもターゲット層をのばしたということで選んだのが、アメリア・イアハートとララ・クロフト。女性飛行士のアメリア・イアハートは、年代を問わず愛され親しまれているアメリカの代表的国民ヒロインの一人であり、アメリカの女性の地位向上に大きく貢献した人物。そしてより若い層の心にも届くよう、人気キャラクターであり、知的で勇敢なララ・クロフトを選びました。そしてその性格として「向上心がある」「親しみやすい」「冒険的」「信頼できる」「機知のある」などを挙げました。

ブランドの性格がはっきりすることで、ブランドの思考、行動、振る舞い、持ち味なども自然と定まり、ブランドが外に発信するすべての要素のトーンが揃います。

ブランド属性|Brand Attributes

ブランド属性は、「機能的属性(Rational attributes)」と「感情的属性(Emotional attributes)」の2つに分けて考えます。

機能的属性は、ブランドが持っている実質的な強み。前述で挙げたビューティー系ブランドを例にすると、「材料の透明性」「治癒力のある」「自然素材」「セルフケア」「コンシャス・キャピタリズム」などがそれに当たりました。

そして感情的属性は、このブランドに触れた時に消費者に感じて欲しい感情です。同様に同ブランドを例に挙げると、「生き生きする」「思いやりのある」「高潔な」「希望に溢れる」などを挙げました。

この2つの属性をブランド属性の土台として、ブランド価値(Brand values)を見出します。ブランド価値についてはまた別の機会で紹介します。