アレクサンドロス大王の肖像が刻まれた指輪

様々なものにこだわりをもっているGiorgioですが、身につけるものも例外ではありません。そこで今回は、彼のこだわりのアイテムのうち3つを紹介しようと思ったのですが、1つ1つのストーリーが思った以上に長いようだったので、1つずつ紹介することにしました。残りの2つはまたいつか。

まず最初に選ぶのは、彼がもう何十年も身につけている指輪です。

ゴールドで重みのあるこの指輪に描かれているのは、歴史が大好きなGiorgioが最も敬う、アレクサンドロス大王。これのオリジナルはメトロポリタン美術館の、やはりGiorgioが最も敬意を払っている文化、グレコ=ローマン(古典古代)にて展示されており、彼が身につけているのは、美術館が販売していたレプリカです。

オリジナルは、アレクサンドロス大王死後のヘレニズム時代、紀元前4世紀後半から紀元前3世紀辺りに作られたもの。この肖像画のアレクサンドロス大王は、ライオンの頭皮を被ったギリシア神話の英雄ヘラクレスに扮しています。ヘラクレスの血統につながっていると信じていたアレクサンドロス大王は、生前に覇権獲得のために発行したコインにも、自身をヘラクレスに見立てた肖像画を用いていました。

アレクサンドロス大王の肖像が刻まれた指輪

本物と並べて見比べても違いがわからないほど精巧に作られたこの指輪を購入して以来、1日たりとも外さず身につけている彼は、「単なるジュエリーとしての指輪ではなく、古代の一部を身につけている気持ちになる」と言います。

ところが、購入して何年か経った80年代中頃に、アクシデントが起こってしまいます。

その頃、Dean&Delucaでは食材の輸入業も始めており、仕入先となる食材を求めてヨーロッパに頻繁に出向いていました。食品のカタログ撮影もイタリアで行うことになり、表紙には特定の食品ではなく、ヨーロッパの歴史を象徴的に示すその指輪を被写体に用いようということに。ちなみにその時のカタログがこれです。

アレクサンドロス大王の指輪を使ったDean&Delucaのカタログ表紙

撮影が順調に進んだのは良かったものの…なんと指輪が無くなってしまったのです!スタッフ総出で随分探したそうですが、見つかることはありませんでした。その時のGiorgioの落胆ぶりと言ったら、私には容易に想像がつきます。

帰国後すぐにメトロポリタン美術館へ向かい、幸いにも同じ指輪がまだ販売されていることを知って安堵したものの、全く幸いではなかったのがその値段。その数年のうちにゴールドの価格が高騰し、指輪の値段も10倍以上に跳ね上がっていたのだそう。泣く泣く購入したのでした。この時でまだ80年代ですから、ゴールドの価値がその後さらに何倍にも上がったいま、指輪の値段が高くなりすぎるとのことで、残念ながら美術館ではもう販売されていません。

私もいつか、そのレプリカのレプリカを作りたいと思っているのですが、まずはその歴史の重みある指輪に相応しい人間になるべく努力をしたいと思っているのです。

ちなみにこれはGiorgioが持っているもう1つのアレクサンドロス大王。前述のコインが実際に埋め込まれたデザインのシガーカッターで、これも何十年も大事にしているアイテムです。