日本から戻ってきて、約2週間が過ぎました。息子も私も時差ぼけもなおり、ようやく元の生活リズムを取り戻りました。
私にとってここ最近のニュースといえば、大好きなArcade Bakeryが閉店してしまったこと…。一昨日の金曜が最終日だったのですが、最後の週はほぼ毎日のように通いました。閉店日に近づくほど、最後にもう1度美味しいパンを味わっておこうというファンが増え、朝から列が店外に溢れ出ていたほど。それを見るたびに切ない気持ちになったのでした。健康上の理由とのことなので仕方がありませんが、我が家には欠かせなくなっていたあの美味しいバゲットをもう2度と食べれなくなると思うととても悲しいです。
さて、今日紹介するレシピは、レッドカラント(赤スグリ/グロゼイユ)を使ったケーキです。
レッドカラントは、ヨーロッパを中心に栽培されているベリー系の果物。ブルーベリーよりも小さく、房状に実がなり、透き通る真っ赤な色が宝石のように美しいフルーツです。味は酸味が強いのと、小さな身の中に種が5-10個ほども入っているため、生食ではなくジャムなどの加工品にするのがほとんど。カラントのジャムといえば、フランスのバール・ル・デュックという町で伝統的な手法で作られるジャムが有名です。ガチョウの羽を使って1つ1つ手作業で種を取り、実の粒々がしっかり残った状態で作られるジャムは、世界で最も高価なジャムとして知られています。
ニューヨークでは生のレッドカラントをスーパーや食材店で見かけることは滅多になく、手に入るのは専らグリーンマーケット。そして店先に並ぶのは1年を通してこの季節の数週間だけです。ですので、見かけると必ず購入し、そして必ずこのケーキを焼いています。
夏になるとGiorgioがこのケーキを楽しみにしているのですが、去年は特にシーズンが短かったのかタイミング良く見つけられず、ケーキを焼くことができませんでした。それほどにニューヨークでは希少な果物です。
今年は無事手に入りました。
このケーキの美味しさの秘密は、何と言ってもレッドカラントの酸味。我が家で作るお菓子の多くがそうであるように(ルバーブのハンドパイやアプリコットのガトーブルトンなど)、酸味と甘みが組み合わさったお菓子が大好きです。そしてこれまた大好きで我が家では常用しているポピーシード(ケシの実)を使っており、レッドカラントの種と共に食感を楽しむと同時に、香ばしい風味をプラスしています。
レッドカラントを見かけたら、このケーキをぜひ作ってみてください。
[Photos and styling by Hitomi Watanabe Deluca]