HI(NY) designのオフィスがある、401 Broadway

会社設立直後、私たちはとりあえずシェアオフィスを借りることにしました。今となってはおしゃれで機能的なコワーキングスペースが増え、市内の至る所で見かけるようになりましたが、当時はまだまだ数は多くありませんでした。私とIkuの2デスク分を借り、間もなくしてフリーランサーやインターンが必要となり、さらにデスクを借り、結局そのシェアオフィスには2年ほどお世話になりました。

最初の頃はただプロジェクトを日々こなしていくことで精一杯だったので、オフィスの賃貸契約で必要となるペーパーワークや、その他の煩わしい諸手続きをしなくて済み、非常に助かったことを覚えています。クライアントとのミーティングには会議室が使えますし、同じオフィスで働く他のクリエイターとの繋がりもでき、シェアオフィスならではの醍醐味を経験できました。

現在数あるコワーキングスペースの中でも人気のNeueHouse。Image from cntraveler.com

プロジェクトが比較的安定し、そろそろ自分たちのオフィススペースが必要だということになり、2011年にオフィス探しが始まりました。気に入る場所はそう簡単には見つからないと思っていたので、長期戦になることを覚悟していました。

とりあえず手始めに、ネットで検索して見つけた物件が良さそうだったので、ブローカーに連絡してその日のうちに見せてもらうことに。ノーホー地区だったので、私もIkuも家から徒歩圏内という完璧な立地で、家賃も予算内。1件目とはいえ、少し期待をして見に行きました。

ところがもちろんそんなうまくいくはずがありません。スペースは思った以上にうんと狭く、しかも窓の外には、手が届きそうなほど間近にある隣接ビルの壁。そのせいで部屋は暗く、狭さと相まって圧迫感が強かったのをよく覚えています。

オフィスビルの入り口

しかしそこで思いもよらぬことが起きました。そのオフィスの現入居者が、私の知り合いであることがその場でわかったのです。普通、新規入居者の見学の際には、現入居者が居合わせないようにすることが多かったりするのですが、そのときたまたま彼が居たのは嬉しい偶然でした。しかも、彼にとってはその小さなオフィスはいくつもある部屋の一つに過ぎず、その部屋は確かアシスタント用のスペースか何かで、普段彼自身は使っていないスペースでした。つまり、少しタイミングがずれていると、彼に出くわすことがなかったかもしれません。

その知り合いとは、写真家のヘンリー・ルートヴァイラー(Henry Leutwyler)。これまで数多くのセレブリティや大手雑誌の表紙を手がけてきた、著名なフォトグラファーです。以前、私の家で行われたとある撮影を担当したのがヘンリーで、それがきっかけで知り合いました。以前代理店で勤めていたときに彼に撮影依頼をしたこともあり(結局そのプロジェクト自体が消滅してしまい、撮影は叶いませんでしたが)、家族でディナーパーティにご招待したこともあったりと、何かと繋がりのある方です。

そしてそれがなぜ”嬉しい”偶然だったのかというと、ヘンリーがその場でブローカーに聞こえないようにこう教えてくれたのです。「僕たちはこれからこのオフィスを出て新しいところに移るんだけど、そこの方が数倍もいいからぜひそっちも見においで」。

それはいいオフィスに違いないと思い、その日のうちにビルの管理事務所に連絡。早速翌日見学させてもらい、結果、私とIkuはそのオフィスに一目惚れをしてしまったのです。

必要最低限のコンパクトなサイズでありながら、高めの天井と大きな窓のおかげで明るく開放的。ビル自体は大きいので管理も行き届いており、そして古いオフィスビルならではのディテールがチャーミング。立地も申し分なく、私たちは即決したのでした。

オフィス入り口ドアの古いガラスがとても気に入っています。

トライベッカ地区とはいえチャイナタウンとの境にあるせいか、元々は中国系の入居者が多く、中でも弁護士や会計士などの事務所が大きい割合を占めていたようですが、ちょうど私たちが入居した頃からクリエイティブ系の会社を優先するようになり、その割合は今ではかなり大きくなりました。例えばファッション系では、Saturdays, Acne Studio, Opening Ceremonyなどが入っており、中でもAcne Studioはオフィス内でサンプルセールをすることもあり、大好きな私とIkuにとって嬉しいおまけでした。

私たちが入居してはや6年が経ちますが、今でも本当に気に入っています。さて今日も美味しいコーヒーを淹れて、1日頑張りましょうか。

[Photos by Hitomi Watanabe Deluca]