前編では、ニューヨークから車または電車(Amtrak)で約3時間のところにある、ペンシルバニア州ランカスター市のおすすめを紹介しました。後編では、アーミッシュが暮らしている地域を含むランカスター郡(Lancaster County)全体のおすすめを紹介します。
前編でも触れましたが、アーミッシュ(Amish)とは、キリスト教アナバプテストの一派であり、それを信仰する人々のことを指します。1700年代中期にドイツ語圏からアメリカに移住した彼らは、文明や虚飾を拒み、今も18世紀移住当時の生活様式である自給自足の暮らしをしています。(アーミッシュ-Wikipedia)
電気や車を使わず、昔ながらの服装はベルトやボタンでさえも装飾とみなして使わないほど質素、教育は14歳まで、など、一般社会から孤立した生活を送っているため、その実態は謎に包まれている部分もあります。
全米各地からアーミッシュを求めて観光客が集まりますが、アーミッシュの人々は当然、人に見せるためにこの生活をしているわけではありません。よって、彼らの本当の意味での暮らしぶりを見ることはなかなか難しいですが、エリアを車で走るだけで垣間見れたり、ツアーなども多く揃っています。
また、ランカスター郡にはアーミッシュだけではなく他にも見どころがあったので、そちらも合わせて紹介します。
アーミッシュのエリアを車でドライブ
アーミッシュの人々が暮らすのは、アーミッシュ・カントリー(Amish Country)またはペンシルバニア・ダッチ・カントリー(Pennsylvania Dutch Country)と呼ばれるエリアで、ランカスター市より東に位置します。地区名でいうと、バード・イン・ハンド(Bird-in-Hand)やインターコース(Intercourse)などが主なエリアで、メインの通りには大型店舗や観光施設などが並びますが、脇道に入るとすぐにアーミッシュの田園地帯が広がります。
バギー(馬車)、ロバを使って耕作するアーミッシュの人、天日干しされた洗濯物(日本では普通ですが、アメリカでは非常に珍しい、アーミッシュならではの風景)、広大な酪農地にポツポツと点在するサイロ、などの風景が楽しめます。
アーミッシュ・アトラクション
アーミッシュの農場、校舎(スクールハウスと呼ばれる、アーミッシュならではの1部屋しかない学校)、バギーツアー、レストラン、お土産屋、などが1カ所に集まった観光施設が多くあります。観光客向けではありますが、最も効率よくアーミッシュの生活を見たり体験できる上に、動物と触れ合ったり、アーミッシュならではのスクーターに乗れたりなど、ファミリーで楽しむことができます。中には、アーミッシュの実際のお宅を訪問できるというツアーもあります。
LancasterPAサイトやDiscover Lancasterサイトなどで、それら施設の一覧を見ることができます。
私たちも実際にバギーに乗ってツアーに参加しました。父親が十代の頃にアーミッシュから離脱したという男性がガイドで、一般的には離脱したメンバーは例え家族でも絶縁されると言われていますが、彼曰く、そんなことはなく今でもアーミッシュの親戚と仲良くしているとのことでした。その他アーミッシュの結婚事情や、時代に合わせて少しずつ変化しているルールなど、興味深い話がたくさん聞けたのは、ツアーならではの経験でした。途中、アーミッシュの実際の農場に寄って見学などもしました。
ショッピング&名産品
アーミッシュの名産品ショッピングとして有名なのが、Kitchen Kettle Village。ここもかなり観光地化されていますが、アーミッシュ最大の名産品キルトをはじめとする、様々な店が広い敷地内に集合しているので、効率よく見ることができます。
前述の通り、メインの通り(PA Route 340や30)には大型店が並んでいますが、味があるのは脇道にある家族経営の店。個人的に楽しかったのは、木の手作りおもちゃを販売するLapp’s Toysや、併設する工房でアーミッシュの人たちが作業するところが見れる家具屋Country Tyme Primitivesなどです。
B&B
私たちはランカスター市内に滞在したので経験していませんが、ランカスター・カウンティには農場にステイできるところも多く、農場で取れた野菜を使った料理がいただけたり、乳搾りができるなど、より深い経験ができます。ここやここでFarm B&Bの一覧が見られます。
グルメ
アーミッシュのレストランはなぜかスモーガスボード、つまりビュッフェスタイルのところが多く、アーミッシュ地区名物の1つとなっています。
パイなどの焼き菓子も有名で、Bird in Hand Bakeshopをはじめとするたくさんのベーカリーがあります。名物はモラセスを使った甘い甘いShoofly pie。アメリカでよくみかけるWhoopie pieの発祥も、ここアーミッシュ・カントリーと言われています。
また、ドイツ生まれのプレッツェルが最初にアメリカに来たのもこの辺りで、アメリカで初めてプレッツェルを販売したというJulius Sturgis Pretzel Bakeryがあり、観光名所の1つとなっています。
ストラスバーグ
ランカスター市内から車で20分くらいにある村、ストラスバーグには、アメリカで現在も運行している蒸気機関車で最も古いストラスバーグ鉄道があります。1832年開業で、現在は観光用の保存鉄道。私たちも往復45分の旅を楽しみました。途中に見えるアーミッシュの田園風景が美しく、息子はもちろん、私たちも十分に楽しめました。近くには鉄道博物館もあります。乗車後は、近くのカフェSpeckled Hedでランチを。
エフラタ
ランカスター市内からやはり車で20分くらいにあるまた別の村、エフラタには、エフラタ回廊(Ephrata Cloister)があります。ここは、やはりドイツからの移民で強い信仰を持った人々が求道生活をしていた場所で、1732年の建物が現存されています。究極に厳格な共同生活を送っていた歴史を肌で感じることができ、ツアーガイドの話も非常に興味深くて、今回の旅行のハイライトとなりました。絶対におすすめです。
番外編
ニューヨークから3時間続けて運転は長いので、往復路それぞれ休憩も兼ねて寄り道をしました。往路では、フィラデルフィアにあるバーンズ・コレクション(Barnes Foundation)へ。印象派からモダニズムを中心とした作品が多く展示されており、とても見応えのあるいい美術館でした。
そして復路では、ニューヨーカーの避暑地の1つとしても知られるニューホープ(New Hope)へ。デラウェア川沿いのかわいらしい街でした。