以前にも触れましたが、私の息子はモンテッソーリの学校に通っています。これまでに、そのプリスクール探しと面接から入学まで、そしてさらにはニューヨークのプリスクールと日本の幼稚園/保育園との違いについて紹介しました。
モンテッソーリ教育とは、イタリアの女性医師マリア・モンテッソーリによって100年以上も前に考案された教育法です。子供が自発的に活動することを尊重し、自分の力で成長、発達させることを促します。自分で物事を解決させるので、柔軟でクリエイティブな考え方をするようになります。そうして子供が自信をつけ、自尊心へとつなげ、自立し、生涯において自発的に行動し考え学び続ける姿勢を持つことができます。それがモンテッソーリ教育の目的です。
今回は、息子の普段の学校生活から気づいた、モンテッソーリ教育ならではの特徴について紹介します。
プラスチックのコップや前掛けは使わない
モンテッソーリは、子供に自立させることが目的なので、大人の日常生活により近い方法で練習をさせます。よって落としても割れないプラスチックを使うのではなく、コップや花瓶など、あえてガラスのものを使っています。例えそれを落として割れてしまっても、それによってガラスは割れるということを学び、次からはより慎重に扱うようになります。担任の先生曰く、今年はまだ1度も誰かがガラスを落として割れてしまったことはないのだそう。
そして食事の際には、大人がそうしないのと同様、前掛け/エプロンは使いません。「前掛けをしているから食べ物をこぼしても平気」なのではく、「食べ物はこぼさないように食べる」練習をします。そのため少しでもこぼしてしまうと、予備の洋服に着替えさせます。もちろん着替えも自分でさせ、まだできない子には先生がそのサポートをします。
自分で Work(おしごと)を選ぶ
モンテッソーリでは、子供の活動のことを「Work(おしごと)」と呼びます。クラスには、子供がおしごとするための「Material(教具)」がいくつも用意されています。子供達はそれぞれ自分でWorkを選び、気が済むまでその活動をし、終わったら片付けをして元の位置に戻し、そしてまた別のWorkを選びます。
息子の学校でも毎日このおしごとの時間が2時間設けられています。自分でおしごとを選ぶので、1つにハマるとそれを何日も繰り返すことも珍しくなく、つい最近も息子が「パンづくり」に夢中になり、1週間ほど毎日のように自分で焼いたパンを持って帰る日が続きました。繰り返しパンをつくることで、よりいいものを作りたいという気持ちが湧いたのか、それまで1つの大きなパンだったのが、最後の日に持って帰ってきたパンは、自分が食べやすいように数個のひとくちパンになっていました。それで満足したのか、それ以降はパンを焼いていません。自分の興味のあることに取り組み、納得いくまで集中し続けることでその個性を伸ばすという、まさにモンテッソーリ教育ならではのプロセスと言えます。
縦割りクラス
モンテッソーリの特徴の一つとして異年齢混合教育が有名ですが、息子が通う学校でも1歳半〜3歳のToddlerクラスと3歳〜6歳のPrimaryクラスの2つに分かれています。この年齢も目安であり、子供の成長に合わせて年度途中にToddlerからPrimaryに移ることも珍しくありません。
先生は Guide(ガイド)
モンテッソーリでは、先生のことをTeacherではなく「Guide(ガイド)」と呼びます。子供達に何かを教える(Teach)のではなく、あくまで子供達が自主的に取り組むための環境づくりをし、そしてその活動に対して援助、ガイドするためにいるからです。
褒めない
モンテッソーリのガイドの特徴の1つに、「褒めない」というのがあります。もちろん、全く褒めないのではありません。例えば子供が何かを頑張って成し遂げた時、「〇〇ちゃん、すごいね!」と大げさに褒めたり、ご褒美シールをあげるのではなく、「よく集中しましたね、全部順番にできましたね。」などのように、落ち着いた口調で、結果そのものよりもそのプロセスや、何が良かったのかを具体的に伝えます。大げさに褒めて大人が喜んでいると、子供は嬉しくなり、褒められたいがためにもっと努力をします。一見良さそうに見えますが、これを続けると子供は「褒められるため」だけに行動するようになってしまいます。褒められることが行動の動機にするのではなく、自分自身でモチベーションを見出せるようになることが大事なのです。
ガイドから学ぶことは他にもたくさんあるのですが、例えば細かい例をあげると、トイレトレーニング中に子供が上手にできなかったりパンツを濡らしてしまった際、アメリカでは「Accident(アクシデント)」と呼ぶのが一般的なのですが、モンテッソーリでは、アクシデントは否定的な意味を持つので使用せず、「You are wet」というように、起きている状態をそのまま伝えるようにしていました。
選択肢を与える
モンテッソーリはよく、「放任保育」だと勘違いされることがあります。その性質上、子供をただ単に好き勝手に遊ばせているように思われがちです。実際は、子供に「自由」を与えてはいますが、「放任」しているわけではありません。そしてその「自由」とは、子供に自己選択を与えるということです。前述のおしごとも、数ある選択肢の中から子供自身が選ぶという「自由」を与えています。けれど自分で選んだからには、責任も伴います。選んだものは大事に扱い、自分で片付けるまで責任を持ちます。また、他の子が選んだおしごとに対して邪魔をしてはいけません。このように、自己選択という自由の中で規律を学び、規律があるからこそ自由が成り立っています。
この選択肢を与えるというプロセスは、イヤイヤ期にとても役立ちます。これは実際我が家でのやりとりですが、朝学校に行く前に「さあ靴を履いて出発するよー」と言うとほぼ確実に「No」と返事しますが、代わりに「今日は黒の靴にする?それとも茶色の?」と聞くと、どちらかを選んで自分で履いてくれます。また、お風呂に入るのを時々嫌がる息子には、「この絵本を読んでからお風呂に入る?それとも先にお風呂入ってから絵本を読む?」などのように選択肢をあげると、どちらか選んでお風呂に入ってくれます。YesかNoの選択肢ではなく、AかBの選択肢を与えることがポイントです。いつも有効とは限りませんが…