「クライアントを選ぶ基準はなんですか?」とよく質問されます。上目線の偉そうなタイトルをつけてしまい少し緊張していますが、私たちとお客さまが気持ちよく100%の力で仕事をする上で非常に大切なことを今日はお話したいと思います。

私たちの仕事は、クライアントの個性や強み、大切にしたいと思っている理念、社会的な存在意義などといった、その会社の唯一無二の「らしさ」を最大に引き出し、その価値を正しく演出し、効果的に伝えることです。そしてそれによって、クライアントが提供するブランドに対してお客さまに共感してもらい、ファンになってもらうことをゴールとしています。ですので、まず私たちがクライアントの思いに共感できるかどうかということが非常に重要なポイントとなってきます。

人の思いとは当然、人それぞれさまざま。会社にとっての目標や哲学だけでなく、その思いの基盤となっているもの、根底にある志、考え方など、その人個人の「らしさ」を私たちは大切にしています。もしかしたらその思いは提供するサービスや商品とは直接は関係ないかもしれませんし、関係ないと少なくともご本人は思っているかもしれません。しかし、ブランドを続けていくと、この個人の「根本」が透けて見えてきます。ここにギャップがあると、本人も苦しくなってきますし、ブランドとしてもブレや違和感が生じてきます。ですので、ここに共感できないときは、お断りさせていただくことにしています。

「こんな会社がわたしたちと相性が良く、効果的に結果をだせる」、そして「こんな会社と仕事がしたい」という気持ちも込めて、私たちが意識している点をあげてみました。

持続可能性がある

経営そのものはもちろん、社会や地球の環境を持続可能にするための長期的な優しいビジョンを持っている会社。短期的な目先の利益だけを追わず、長期的に人や環境にポジティブな影響を与えたいと考えている会社です。市場をみて他と比較して差別化することにフォーカスしすぎてしまうこともサステイナブルにビジネスをしていくことを難しくするので、会社が持っている唯一無二の「らしさ」を強みとしてビジネスに活かしたいという思いを持っているかどうかも大切なポイントです。持続可能な将来のビジネスのあり方、社会の形、地球の姿、を思い描きながら利益を生み出す会社を、私たちはサポートしたいと思っています。

社員がエシカル・リーダーシップをもてる会社

「社員がやりがいを持って働く」と言うとありきたりな表現ですが、やりがいを持って仕事をするには、社員一人ひとりが、職位の上下にに関係なく、フェアで尊重し合える職場であることが必要不可欠です。企業コンプライアンスという概念が一般的になりましたが、「会社のルールだから守る」のではなく、社員全員が自分軸で考え、行動を起こし、お互いに影響し合うことが大切です。そうすることで、意味なく続く慣習や、必要以上に多く長い打ち合わせ、無駄な資料作成の削減にも繋がります。効率アップにつながるので、長時間労働は減り、労働生産性が上がります。社員にエシカル・リーダーシップがあるクライアントとプロジェクトをすると、お互いに信頼し尊敬し合う関係が出来上がるので、チームの意識が強まり、結果としてとても素晴らしい仕上がりになります。

社会に還元している、環境に配慮している

持続可能性と重なりますが、ひたすら利益だけを追求するのではなく、地球社会の一員(グローバルシチズン)としての責任を持ち、共存共栄を目指し、こどもたちの未来を考えた社会的な役割を果たすための努力を惜しまない会社を、私たちは応援したいと思っています。

偽りがない

基本的なことですが、偽りのある人たちに伴走することはできません。以前、こんなことがありました。とある中小企業の代表代理の方から、リブランディングのご依頼がありました。お話を伺うと、リブランディングの目的は、新しい顧客層へのリーチとのことでした。話し合いを重ねたあと契約に入る前に、チーム編成をしてプロジェクトの概要をメンバーと共有したところ、偶然にもチームの1人がその中小企業の代表と遠い知り合いだということがわかりました。そして、その会社が最近起こしたスキャンダルについてもその時知りました。一般にはほとんど知られてないような小さなニュースですが、実際にあった倫理観を問われるような不祥事でした。

不祥事があったからサポートしたくない、というのではありません。問題はそれを隠していることです。人は誰でも間違いを起こします。大切なのは、それをきちんと受け止め、深く反省し、失った信頼を取り戻すために真摯に向き合うことです。誠実さをもってリスタートしていくために、リブランディングをすることは素晴らしいことですし、私たちも精一杯応援します。ですが、まるでその不祥事を無かったことのように、表面的に世間へのイメージを払拭させるためにリブランディングという手段を使うのは、間違いであり、欺きです。たとえ実際にリブランディングをしたとしても、敏感な人は矛盾を感じ取り、不信感を抱いたことでしょう。

格差や差別を縮めようとしている

世の中のさまざまな格差を縮める努力、社会的に弱い立場のひとたちへの配慮をし、多様性を受け入れる、人に優しい会社と私たちは仕事をしたいと思っています。また、助ける側、助けられる側という上下ある力関係ではなく、お互いが両方向に助け合い、影響し合えるようなWINWINなビジネスを目指す会社を応援します。

決定権を持っている人がチームにいる

実務的な話になりますが、経営決定権を持っている方と一緒にブランド構築を進めることができない会社はお断りしています。日本の企業構造では、縦割りになっているところが多いと思いますが、ブランディングは経営戦略なので、担当者からボトムアップして決定をしていく会社では、効果的な戦略が立てられない上に、無駄に時間がかかってしまいます。わたしたちは、ブランドDNAは短期間で構築することが効果的であると考えています。ブランドは生き物なので、構築後も時代や状況や課題に合わせて調整は常におこなっていく必要があります。ですので、スピード感をもって決定し、素早く軌道修正をしていけるチームである必要があります。

デジタル環境でのコミュニケーションに対応できる

HI(NY)はニューヨークでほとんどの作業をしており、クライアントも様々な国や地域にいるので、効率よくシームレスにチーム全体が足並みを揃えてプロジェクトを進めていくために、ビデオ会議や、生産性を最大限にできるデジタルワークスペースなどのツールを使っていただけるようお願いしています。とてもありがたいことに、今までこういった進め方をしたことがないクライアントもすぐに取り入れてくださるので、スムーズにプロジェクトを進めることができています。