今日紹介するレシピは、ガトーブルトン(Gâteau Breton)。「ブルターニュのケーキ」という名前の通り、フランスはブルターニュ地方のお菓子で、バター風味たっぷりの、ケーキというよりクッキーに近いザクザクとした食感が特徴の焼き菓子です。
フィリングが入っているものと、ガトー生地だけのものとがあり、いれる場合はプルーンが最も一般的で、生地の間にフィリングを挟んだまま焼き上げます。私もよく作るのはプルーンで、以前プルーンのチーズタルトレシピで紹介したアジャン産のプルーンを使って作っています。それはそれは家族に大人気で、6インチ(約15cm)のガトーを作ってもあっという間になくなってしまいます。
そして最近、バリエーションを増やすためにプルーンの代わりに使っているのがドライアプリコット。ほんのり甘い生地にドライアプリコットの酸味が絶妙で、プルーンと同じくらい、もしくはそれ以上に美味しい仕上がりになったので、レシピを紹介しようと思いました。
アプリコット自体、Giorgioが大好きな果物。食材店などで、鮮やかなオレンジ色の美味しそうなアプリコットが並んでいるのを見つけるだけで、2人で小躍りしてしまいそうになるほどです。もちろん生のままでもよく食べますが、美味しい生あんずの旬は極めて短いので、ドライアプリコットも常にストックしています。
もちろんアプリコットを使った焼き菓子も彼の大好物。しかし少なくともニューヨークで手に入るアプリコットの焼き菓子やペイストリーは、残念ながら缶詰やコンポート、ジャムを使ったものがほとんどで、彼のお気に召すものには滅多に出会ったことがありません。
そんなわけで、私はこれまでに相当な数のアプリコット焼き菓子を作ってきました。
生アプリコットは、甘みと酸味のバランスが1つ1つ全然違ったり、熟成のピークが短くてわかりづらいなど、焼き菓子に使うには非常に扱いにくい果物。最初のころは、何度試しても失敗続きで、美味しい生あんずの焼き菓子なんて不可能なんじゃないかと疑いさえしたほどです。それでも繰り返し焼き続け、なんとか扱い方が少しずつわかるようになってきました。その時使うアプリコットによって砂糖の量を変え、旬の甘いものはパイに使い、季節外れの酸味の強いものはタルトにし、甘めのカスタードフィリングと一緒に焼くなどして、工夫をしています。
そんな中、1年中いつでも手に入るドライアプリコットはありがたい存在。特にこの季節にはなくてはならない必需品です。前もって調理してふっくらさせるというひと手間がかかったり、それでも生あんずのようなジューシーさは出せませんが、酸味・甘みバランスが安定して使いやすいのは言うまでもありません。
そして、プルーンはアジャン産のものだけをいただくのと同じように、アプリコットにもこだわりがあります。
アメリカで手に入るドライアプリコットは、トルコ産とカリフォルニア産の2つに分かれます。大半を占めるのがトルコ産で、カリフォルニア産のものと比べて色が薄く小ぶり、そして酸味が少なめです。値段も低めで、工場パッケージで販売されているものはほぼ間違いなくトルコ産です。対してカリフォルニア産は濃い橙色で、なんといっても絶妙の酸味・甘みバランス、そして豊かな風味が特徴です。その中でも私たちが選んでいるのが、ブレンハイム(Blenheim)種。希少でとてもデリケートな品種ですが、とても濃厚で非常に美味しいアプリコットです。
今回ガトーブルトンに使っているのもブレンハイム種ですが、もちろん、見つからない場合は他のドライアプリコットでも問題ありません。
[Photos and styling by Hitomi Watanabe Deluca]