Waphytoワフィト
ローンチ時の全商品。アースカラーと日本の伝統色の展開で、提案させていただいたタグライン「Live colorfully with Mother Earth(母なる大地とカラフルに生きよう)」を表現しています。

今日紹介するブランディング・プロジェクトは、今年9月にローンチしたライフケアブランド「Waphyto(ワフィト)」です。

Waphytoは、日本の植物療法の第一人者である森田敦子さんが手がける、三河発のブランド。女性のライフステージに寄り添い、つややかな肌と潤うからだで、美しい100年時代を生き抜いてほしいという思いが込められています。フランスで体系化されたフィトテラピーと、日本で確立した本草学というふたつの叡智をベースに、人と自然を密接に結ぶフィトテラピーの進化系、植物バイオメソドロジーとして誕生しました。

森田さんとは約8年来のお付き合いで、これまでにもいくつかのブランド立ち上げに携わらせていただきましたが、今回は森田さんの集大成ということで、これまで以上に慎重にブランディング・プロセスを進めました。

Waphyto ワフィト
外側は再生プラスチックを使用。チューブ以外はロゴをデボス加工で施しています。色は左から薄柿(うすがき)、鴇浅葱(ときあさぎ)、水柿(みずがき)、鳶色(とびいろ)、土器色(かわらけいろ)、赤丹(あかに)。

最初にお話をいただいた時点で、ブランドコンセプトやネーミングが仮決定した状態でしたが、肝となるターゲット・オーディエンスがかなり広範囲で設定されていたため、いち個人には非常にリーチしづらい戦略となっているのは明らかでした。狙ったターゲットに効果的に伝えるために、ターゲットを具体的に絞ること、そしてそのために、この新商品は誰に向けてつくられ、どういう人に買って欲しいのかをまず定義しました。

幸いにも、ブランド(ブランド・オーナー)の強みは引き出すまでもありませんでした。それは日本の植物療法を牽引し続ける森田敦子さんの知見、そして彼女の存在そのものが、他に山ほどあるビューティ・ブランドを大きく引き離す、紛れもない強みでした。それだけではありません。植物を地質学の観点からも包括的に捉える森田さんが選んだのが、東三河。日本最長の断層帯である中央構造線上に位置するこの地域には、肥沃な土壌が広がっており、この地で採れる植物を使用すること、そして特許も取得された画期的な植物成分抽出法でそれら植物の栄養素を引き出すことを貫かれています。

Waphyto ワフィト
外箱には滴のような有機的なダイカットから商品の色が覗いています。箱の内側も商品の色にしており、ある美容ジャーナリストの方から「まるで〝着物の裏地に凝ることこそが粋である〟という古き良き江戸文化を連想させられる」と素敵なお言葉をいただきました。

日本の風土や気候ならではの特別な植物、日本で独自の進化をとげた本草学、これらをフィトテラピーという知恵と技術に相乗させて生まれたのが今回の商品であることを学びました。このことから、メインターゲットの地域は欧米、特に北米都市部が最適だと考えました。森田さんが作る商品は、現代の言葉で言うクリーンビューティ。2017年ごろからアメリカを中心に始まり、今では世界を席巻するビューティトレンドですが、正式な定義はないにせよ、クリーンビューティはそれまで当たり前のように含まれていた「有害な成分」を排除したものというのが一般的な認識です。一方、森田さんが追究されてきたのは植物の真の力。その力を最大限に引き出す上で、有害な成分を含む余分なものは必要なかったのです。トレンドの1つとしては決して捉えられたくない、他よりも深いレベルで作りあげられたこの商品の真価を認めることができるのは誰か、と考えた結果で選んだターゲットでした。

ターゲットをさらに絞って設定したのち、新規に提案し即決したのがネーミング、Waphytoです。WA(和)とPhytotherapy(植物療法)を組み合わせ、「日本発の植物療法」をわかりやすく表現しました。WA(和)は日本を意味しますが、同時に調和、ハーモニーのニュアンスも含んでいます。WA(和)という言葉は欧米では誰もが知っているというわけではありませんが、ある程度日本文化に対する造詣がある人であればわかる言葉です。

その後、ブランド価値やプロポジション、ビジョンなどを概念化し、日本と北米でほぼ同時のローンチを目指してブランド戦略を進める中で起こったのが、新型コロナウィルスによるパンデミック。予定していたニューヨークでの撮影やトレードショーは一旦見送り、まずは日本で展開することに急遽方向転換をすることにしました。時代に合わせてフレキシブルに軌道修正できるのはブランディングの強みです。

制作したブランドムービーです:

ローンチ前は怒涛の日々でしたが、無事9月2日にオープンを迎えることができました。

様々なコラテラルの中でも特にこだわったのは、PCR(Post-Consumer Recycled)プラスチックを使った新しい試みのパッケージデザイン。担当していただいた韓国のプロダクション会社も、これまで作ったことのないものをゼロの状態から作りあげていくということで相当無理をお願いし、どうすれば私たちの思い描くものが実現できるのか、諦めずに取り組んでくださいました。マットなテクスチャーからデボス加工のロゴ、そしてアースカラーと日本の伝統色にこだわった微妙な色のニュアンスに納得いくまで何度も試作を重ねました。Ikuも韓国へ足を運び、プロダクションチームの素晴らしい尽力のおかげで、大満足の仕上がりとなりました。

私たちは、Waphytoが掲げる理念を4つのEという形で定義をしています。私たちが森田さんからお話を伺う中で、今回の新しいブランド設立は森田さんにとってあくまで1つのステッピングストーン(手段)であるということがわかりました。森田さんの描く未来には、本来の意味での人と植物の共生、様々な介護問題や、女性たちへのサポートなど、それは多岐に渡ります。これらの森田さんのビジョンを、[Elemental, Ethical, Environmental, Empowering]という伝わりやすい形に落とし込んだのが、Waphytoの4Esです。この未来実現のために努力を惜しまない森田さんのサポートを少しでも私たちに担うことができたのであれば大変光栄です。

Waphyo ワフィト
ウェブサイト。ECのプラットフォームにはShopifyを使用しています。
Waphyto ワフィト
来月にはベビーラインが登場予定。ベビーらしくパッケージにも楽しい仕掛けをしていますのでお楽しみに。