私の息子も3歳4ヶ月になり、息子のクラスメートや友達の親との会話に最近多く上るようになったのが、この先の教育について。現在はプリスクールに通っており、4歳となる来年は、Pre-K(Pre-Kindergartenの略)の年になります。これは日本の幼稚園年少にあたるのですが、年少、年中、年長をアメリカの教育システムにあてはめると、基本的には以下のようになります:
4歳児 年少 Pre-K
5歳児 年中 Kindergarten(小学校の初等部/0年生)
6歳児 年長 1st Grade(小学校の1年生)
5歳児であるKindergartenからが義務教育のため、現在通っているプリスクールに来年度も残って再来年にKindergartenへ入学するというオプションもありますが、公立私立共にPre-Kから募集している小学校も多いため、今のこの3歳児の時点で、次の教育/学校を決める第1関門が訪れます。もしPre-Kから入学させるのであれば、この冬から来年始めにかけて願書を提出することになります。
そこでまず親たちが迷うのが、公立にするか私立にするか。
息子のプリスクールの親たちは、私が話をした限りでは、私立と決めている人が多いようですが、まだ決め切れていないという人もちらほら。私も後者の1人で、私立か公立かに関係なく、息子に合ったいい学校を見つけたいという気持ちが強いのですが、私立と公立ではシステムにかなりの違いがあるようなので、前もってその違いを勉強しようと思いました。
そこで、私立校と公立校の違いについて、少なくともニューヨークでの違いについてまとめてみました。
なおこの件に当たって、School Search NYCの創設者である教育コンサルタントのRobin Aronowや、入試アドバイスをするAristotle Circleのアドバイザーからお話を伺う機会があったので、そこで得た情報なども合わせて紹介します。
入試
公立校では入試がありません。また、生徒の学力や能力などで学校側が選ぶこともできないので、希望者は全員受け入れる決まりとなっています。
定員より多くの希望者がいる場合は抽選となります。もちろん、学校区内の生徒が優先され、すでに兄弟姉妹が学校の生徒の場合は、プライオリティが与えられます。
よって人気公立校の学校区に引越すというのもよくあることで、当然人気校区の地価やレントが上がります。その代表的なエリアといえばトライベッカ。トライベッカにある公立小学校PS234 Independence Schoolは、ニューヨークの中でもトップを争う人気と質の高さで評判で、この学校のために引越しをする家族が後を絶ちません。私の知り合いには、エリア外のマンションに住みつつ、PS234に子供を通わせるためだけにトライベッカに別の小さなマンションを借りているという人さえいます。それでも私立校に行かせるよりは安く済み、かつ私立校と同等レベルの教育が受けられるのだと話していました。
PS234に限らず、NYの公立校では以下のような循環ができてしまっています:
人気学校区に人が集まる→
学校区の地価やレントが上がる→
裕福な家庭しか住めないエリアになる→
裕福な家庭の生徒が集まるので、寄付金も多く集まり、より質の高い教育や施設が提供できる→
学校区の地価やレントがさらに上がる
よって、公立校は質の高い学校とそうでない学校の差が開くばかりで、問題視されています。
そして私立には入試があります。学校によって内容は違いますが、生徒や親の面接は大体どこも必須で、テストがあるところも。私の知り合い夫婦も現在入試準備中で、そこでは子供に関する10,000ワードの作文提出が必須とされており、10,000ワードというと日本語では作文用紙40-50枚分相当で、苦戦しているとのことでした。
そして私立にも当然人気校があり、コネクションがなければ入試さえ受けられないところも少なくありません。また別の友人夫婦は、トップ人気校の1つであるSaint Ann’s Schoolの説明会に参加したところ、参加者全員が学校側に「ここに来ているということはコネクションがないということなので、この中から入学できる家族はかなり限られます。」とはっきり言われてしまったそう。なおこのSaint Ann’s Schoolは、あのマット・デイモンの子供でさえ入れなかったという話が有名です。
クラスのサイズ
私立の学校は、1クラスにつき生徒が多くても10-15人。それに対し、公立の学校は1クラスにつき生徒が25人、多いところでは30人以上とのことで、私立に比べると先生の目や配慮が生徒1人1人に行き届きにくい環境になります。
カリキュラム
公立は、国/州/市の教育方針や条例に沿った教育をとります。対して私立は、それぞれの方針に沿った自由な教育方法をとります。生徒それぞれの個性に合わせた教育をするなどの柔軟さもありますが、学校によっては偏った教育を取り入れている場合もあるので、慎重に選ぶ必要があります。
また公立学校において、行政の予算カットなどでまず削られるのが、美術、音楽、体育といった教育ですが、私立校ではそういった科目に重点を置いている学校も多くあります。
トラディショナルvsプログレッシブ
カリキュラムの延長ですが、アメリカの教育方針を大きく分けるとトラディショナルとプログレッシブの2つに分かれます。トラディショナルが、従来の教育法である先生が軸となった仕組みであるのに対し、プログレッシブは、こどもの個性や自発性を尊重した、子供個人が軸となる仕組みです。
公立校の中でもトラディショナルとプログレッシブに分かれるものの、前述の通り条例に沿っているため、振り幅大きく分かれることはありません。どちらかに徹底した教育方針で進めたい場合には、私立を選ぶ方が賢明です。
先生のクオリティ
公立の先生のほうが、私立の先生に比べて給与が高く、福利厚生も整っているため、公立学校の先生のほうがクオリティが高い可能性があると言われています。また公立の先生は市が指定する教員免許の取得が必須ですが、私立の先生にはその義務がありません。その給与や免許が影響してか、経験年数の少ない先生ほど私立に多いという数字も出ています。
逆に、より専門的な先生が多い可能性が高いというのが、私立校のメリットです。
授業料
公立校は無料。対して私立校は、マンハッタンでは2019-20年度の学費は$45,000-$55,000(510万円〜625万円)がほとんどです。なお、ニューヨーク公立校の生徒1人にかかるコストの平均は、この記事によると$21,206(240万円)だそうで、国全体平均の$10,000も高いのだそう。もちろん税金によって賄われており、また学校によっても上下があります。
なお、ほとんどの私立校ではファイナンシャルエイド、つまり金銭的な支援プログラムが用意されています。授業料が払えない家族に補助金が提供される制度です。学校によってその補助額率や枠の数は変わりますが、申請する際にはその家族の年収状況を提出する必要があります。
後半では、さらに細かい違いなど、役に立つウェブサイトも合わせて紹介します。