ブランディングを成功させる方法

PART1の「日本と世界のデザイン観の違いについて」、そしてPART2の「ブランディングとは何か」に引き続き、Ikuよりブランディングについてお届けします。


3. ブランディングを成功させるには

ブランディングを成功させるのに必要なのは、まずはじめにブランディングをすることです。

禅問答のように聞こえますが、これはブランディングをする順番のことで、まずはじめにブランドの基礎となり核となるシステムを構築し、次のステップとしてこの基礎に基づいたウェブサイトやステーショナリー、内装、広告などを作っていくということです。

実は日本ではこの順番でできているところが少なく、よく見られるのは、ブランドの基礎をつくる前に先行してウェブサイトやパッケージなどを別々に作ってしまい、そのあとブランディングを導入し帳尻をあわせていく、というものです。これではせっかくブランディングをしても、効果は半減してしまいます。

欧米では、商品開発やサービス、店舗、レストラン、ホテルなどを立ち上げるときにまず始めるのがブランディングで、先にブランドのシステムを構築することを意味します。この順番が正しくないと、まさに砂の上に城を立てたようなグラグラとした不安定な印象を与えるブランドになってしまい、企業が伝えたいことを正しくお客様に認知してもらえません。

HI(NY)では、前述のブランドの基礎であるシステムを『BRAND SYSTEM(ブランド•システム)』、次段階でこの基礎に基づいて制作するウェブサイトやステーショナリー、内装、広告などの諸々の制作物を『BRAND COLLATERAL(ブランド•コラテラル)』と呼んでいます。

『ブランド•システム』では、市場の現状、問題点、競合などのリサーチ、それを踏まえた上で、クライアントの強みやビジョンを活かしたコンセプトや戦略、名称、スローガンなどを考え、そしてそれを視覚的に表現したVI(ビジュアル•アイデンティ)を作成していきます。

その次に行うのが『ブランド•コラテラル』の作成。ブランド•システムに忠実に、ブレないように、受け手が常に一貫した印象とメッセージを受け取れるよう細心の注意を払って制作物をデザインしていきます。また内装や撮影、コピー、映像など、他のクリエイターや会社とチームとして行うものは、ブランド•システムを体現するのに最も適したチームを編成し、全体を俯瞰しながらクリエイティブ•ディレクションをして進めていきます。

私たちはいつもブランド•システムはブランドの『北極星』であると説明していて、ブランドに関わる全てのものが、この北極星に向かって構築されていて、常に全てのものがこの北極星を目指して進んでいくということがブランディングを成功させるための重要なポイントです。

そしてこの北極星、ブランド•システムを構築するときに押さえておくべきことは、以下の9つの項目です。強いブランドはこれがきちんとカバーされています。
1 ビジョンがある
2 価値がある
3 意味がある
4 一貫性がある
5 差別化されている
6 柔軟である
7 信頼性がある
8 持続可能である
9 永続的に約束を果たしている

これを可能にするのが、その企業の『らしさ』です。

人の個性はその人だけの唯一無二のものであって、その人がその人らしくいる以上に素晴らしい魅力はありません。それと同じことで、企業も扱うものが何であれ、その企業らしくいること以上に強い差別化ポイントはありません。どこか他の企業の真似ではなく、その企業独自の絶対的な強みや個性、ビジョンなどその企業『らしさ』を熟考し、理解し、膨らませ、追求していくことが、ブランディング、そして企業を成功に導く大きな第一歩になると思います。

[Photo and styling by Hitomi Watanabe Deluca]