Direct-to-consumer、略してDTCまたはD2Cと呼ばれる、従来の小売業者などを介さずに、メーカーやブランドが自社サイトで直接販売するビジネスモデルがアメリカで注目を浴びだして、早10年近くになります。メガネブランドのWarby Parkerを筆頭に、グルーミングブランドのHarry’s、洋服のEverlane、マットレスのCasper、スーツケースのAway、アクティブウェアのOutdoor Voices、化粧品のGlossierなどが、第一世代として大きく成功しています。(ちなみに現在のD2CブランドのランドスケープはこのLUMAscapeが最も網羅しています。)

私たちHI(NY) designも、D2Cスタートアップのブランディングをお手伝いさせていただく案件も増えているため、できるだけ最新のD2C事情を得るように努めていますが、最近はその数が激増しているため、似たようなブランドが増えて、差別化が難しくなってきているのが現状です。D2Cブランドはビジュアルに力を入れているところが多いため、どこも一見オシャレな雰囲気ですが、やはりきちんとブランディングをして、そのブランドのビジョンやストーリーがしっかりと定められ、一貫したメッセージをアウトプットできているかどうかによって、その差は明確に現れています。

ネットの普及で、消費者がそのブランドに触れるタッチポイントが増え、アウトプットの手段や種類も多数ありますが、今日はその中でも商品そのものを見せるビジュアルに焦点を当て、ただスタイリッシュに美しく見せるだけではなく、ブランドのビジョンやメッセージが反映されている成功例を挙げてみます。

LOLA(生理用品)

Photos from LOLA

オーガニックコットンのみを使用した、女性の身体に優しい生理用品を作るLOLAですが、ミッションの1つとして、生理は恥ずかしいもの、隠すべきもの、という偏見をなくす運動をしています。ビジュアルは、羽つきナプキンをつけた下着から羽が見えている写真。私たち女性にとってはなんてことない光景ですが、こうして写真として、ましてや商品ビジュアルとして見たことは恐らくこれまでなかったと思います。

Flamingo(女性用カミソリ&ワックス)

Photos from Flamingo

Flamingoは、カミソリをメインとする女性用パーソナルケアのブランド。ビジュアルは商品写真というより使用方法ですが、これまでストレートな表現が避けられがちだったものを、堂々とまっすぐに表現。女性が、自分の身体に対して健康的でポジティブな気持ちを持ってもらうための活動をするブランドならではです。

Girlfriend Collective(アクティブウェア)

Photos from Girlfriend Collective

ペットボトルをリサイクルしてレギンスなどのアクティブウェアを作っているGirlfriend Collective。環境問題に一番力を入れていますが、モデルも人種や体型に年齢、障害を持っている方など、実に多様性に満ちています。さらに最近では、プロのモデルを雇う代わりに、新型コロナの影響によって仕事を失った一般女性をモデルとして参加してもらい、フィーを支払ってサポートするという素晴らしい取り組みをしています。

Daily Harvest(冷凍食品)

Photos from Daily Harvest

Daily Harvestは、栄養素の高い新鮮な食材だけを使って作るヴィーガン冷凍食品のサブスクリプション・ブランド。全ての商品のビジュアルに、1. 素材の写真、2. 調理後の写真、3. モダンなライフスタイルに溶け込む写真、が用意されており、冷凍食品が持つ不健康なイメージや、家事の手抜きの印象を拭いとっています。仕事で忙しくても健康的な食事を取りたいという女性が、冷凍食品への抵抗や罪悪感をなくすためのブランドの姿勢が伺えます。

Thinx (BTWN)(生理用ショーツ)

Photos from Thinx

Thinxは、ナプキンと一体型の吸収型生理ショーツを提供しているブランド。Thinxも素晴らしいブランドですが、その姉妹ブランドとして登場したのがThinx (BTWN)。同じショーツですが、初潮をむかえる10代の女性とその親をターゲットとしています。初経をむかえるときというのは、恥ずかしさや自分の身体の変化に戸惑うもの。罪悪感を覚えるという女性も少なくありません。そんな10代の女性たちに正しい教育を与えるサポートをしています。ビジュアルもそれに相応した、ポップで楽しそうなものが使用されています。

hims(男性用ヘルスケア)

Photos from hims

脱毛症や勃起不全など、男性特有の悩みに特化したヘルスケアブランド、hims。自分の外見や健康の悩みについて医者と話すことに抵抗がない男性は10人に1人以下という現状の中、薄毛やEDで悩むことは恥ずかしいことではなく、それを治療しようとすることはダサいことではないという意識改革を促しています。ビジュアルは、変にカッコつけるのではなく、普通らしさや親しみやすさがあり、それであってクール。ターゲットのユーザー目線で意識されていることがよくわかります。

hers(女性用ヘルスケア)

Photos from hers

himsの誕生から1年後に生まれた女性版のhers。避妊ピルを中心に、女性の悩みに特化しています。himsのポジティブなビジュアルとは対照的で、女性が悩み落ち込む姿も使用されているのがhers。これは男性が目的を求めるのに対して、女性は共感を求めるから。高い医療コストや気になる周りの目から解放する手段を与えるhersならではの、女性の心情を表現しています。

Cuup(ブラジャー)

Photos from Cuup

従来のサイズだけで区別されたブラではなく、胸の形や密度をも考慮したブラジャーを作っているCuup。そんなブランドらしく、人種や体型など多様性のあるモデルを使用していますが、それとは別に、一般の女性45名が商品のブラを着用して撮影されたビジュアルが非常に印象的。女性の強さやしなやかさがうまく表現されており、思わず欲しいと思わせます。