人気のピースナッツクッキー
呉市にあるPEAceNUTS Café

今日紹介するブランディング・プロジェクトは、広島県世羅町にある農園とそのカフェ「PEAceNUTS Café(ピースナッツカフェ)」です。

プロジェクトの概要

クライアントは、広島県呉市を中心にさまざまな事業を展開されている企業で、ご依頼をいただいたのはこの中の農業部門。広島から1時間のところにある小さな町、世羅(せら)町の農園で育てた野菜を商品化して販売されていました。売れ行きや今後の方向性に行き詰まりを感じており、リブランディングに乗り出しました。

スタッフのみなさん

ブランディングのプロセス

ブランドオーナーであり、農園長の森澤祐佳さんの話をじっくり伺いました。元々は世羅町で小学校教諭をしており、7年前に一念発起して教職を離れ農業を始めたとのことで、それは農家の多い世羅の少子高齢化、地元に残りたい生徒が多いのに雇用機会がなく、仕方なく都会へと離れていく現状をみて、どうにかしたいという思いからでした。

世羅で若者のためのサステイナブルな雇用を創生したいという彼女の強い思いをブランドのビジョンと考え、そしてその手段が農業であることを踏まえ、「未来への種まき」を軸とし、「ReSEED(リシード:再び種をまく)プロジェクト」としてスタートしました。

PEAceNUTS Café

ReSEEDプロジェクトの1つ目として始めたのが、PEAceNUTS Caféです。

「外国人旅行客が選ぶ日本の名所ランキング」という調査で2位と3位を占めるのが広島。さらには訪日外国人の中で欧米諸国からの観光客を占める割合が日本全国で最も高いのも広島ということがわかりました。日本の中でも特殊な地であること、そして「循環型な経済を創造し、雇用ができ、町が維持されていくこと」というゴールを掲げるブランドに強く共感を抱く層を定め、コアターゲットを絞り込んでいきました。

農園の主力商品として作っていたのが、粒の大きさで知られる「おおまさり」落花生。栽培の難しさを乗り越えて作られたそのピーナッツは、クオリティが非常に高くこのまま中心的な商品として扱っていくことに意義はありませんでした。それにあたってネーミングを慎重に進めました。広島といえば、世界で最も平和への思いやメッセージの強い場所の1つ。そこで考えたのが、PEAceNUTS(ピースナッツ)という名称です。人種に関係なくPeanuts(ピーナッツ)とPeace(平和)の両方が伝わるよう、さらには政治的なニュアンスが重くなりすぎないようポップに仕上げるため、表記方法などもこだわりました。

雇用創出を目指し、世羅産落花生PEAceNUTSとそれを使った商品開発、同じ農園で作られる他の野菜とその商品開発、それらを実際に購入、飲食できるPEAceNUTS Café、そしてBtoCのeコマースへと展開していきました。

私たちは、森澤祐佳さんが求めていたインパクトを確実に与えるために、世羅町にエコシステムを構築する必要があると考え、ReSEEDプロジェクトを3つの取り組みに整理しました。1つ目がPEAceNUTS Café、2つ目が農業とデジタルライフスタイルを提唱するシェアオフィス、そして3つ目は世羅のこどもがオンラインで世界最先端の教育が受けられる放課後スクールです。

ReSEED(リシード:再び種をまく)プロジェクト

このブランド全体を正確に体現するため、消費者に感じてほしい気持ちの属性と、このブランドを人格に例えたときのブランドパーソナリティを設定し、この世界観を表現したヴィジュアル・アイデンティティを構築をしました。世羅のシンボル明神山を帽子とみたてた若いファーマーをロゴマークにし、ブランドが大きなビジョンに向かって変化に合わせて素早く軌道修正できるよう、アイコンを自由に組み合わせて、柔軟に展開できるビジュアルシステムにしました。これを元にブランドガイドを作成。このガイドラインに添いつつ、全てのタッチポイントにおいて、ブランドのビジョンと世界観がターゲット・オーディエンスに伝わるようにブランドコラテラルをデザインしていきました。

オープン後のPEAceNUTS Café

その他多くのプロジェクト同様、進める中で新型コロナウィルスによるパンデミックが発生し、ブランディングの軌道修正を余儀なくされました。その都度、状況や課題に合わせて調整をおこない、スピード感をもって素早く柔軟に修正をしていきました。

PEAceNUTSピーナッツを使ったクッキーはその美味しさから人気を博し、メディアにも取り上げられ、数百缶の単位でのオーダーも入るのだとか。(2021年9月現在、2ヶ月待ちだそう!)そして何よりも、ここで働く活気あるスタッフの皆さんは、地域との繋がりを大切にして、地域の活性化と社会に貢献する会社で働けることに喜びと誇りを感じているそうです。

PEAceNUTS Caféでは、農園で採れた新鮮な野菜をたっぷり使ったピザデリボックスをいただくことができ、またPEAceNUTS Caféオンラインショップでは、前述のクッキー以外にも、ピザスープ、そして最近は牡蠣ピー(ナッツ)のオイル漬けという珍しいおつまみなども販売されています。インスタグラムでは美味しそうな写真や世羅の魅力などがふんだんに投稿されているので、ぜひご覧になってください。

ReSEEDプロジェクトはまだまだ始まったばかり。大きなゴールに向けて、これからも伴走していけることに、私たちも誇りを感じています。

PEAceNUTS Caféでは、農園で採れた新鮮な野菜の販売も行っています