今日紹介するプロジェクトは、Pursoma(ピュアソマ)という、ニューヨークを拠点とするビューティー・ウェルネスのブランドです。

セラピーバスソルトをはじめとする、「セルフケア」をテーマとした商品を展開しているPursomaは、商品に含まれる原材料の全てをオーナー自ら世界中を回って厳選し、不純物を一切含まない100%ナチュラルであることに強いこだわりを持っています。ニューヨークをはじめとした全米の高級スパやブティックなどで取り扱われており、その効果の高さに熱狂的なファンも少なくありません。

このようにすでに軌道に乗っているPursomaが、今回私たちに仕事を依頼してきた理由は、新しいコレクションを展開するためでした。新コレクションの展開先は、ULTA(アルタ・ビューティー)という、全米に1000店舗以上を構える大手コスメ小売チェーン。ここでULTA限定ラインを展開する上で、新しいパッケージが必要とのことでした。

ところが話を伺ううちに、パッケージをデザインするためにはまずリブランディングが必要だということが明確になりました。なぜなら、Pursomaの既存顧客と、ULTAのオーディエンスに、あまりに大きな差があったからです。

Pursomaの主要商品であるバスソルトの価格帯は、$14〜$36。1ドル110円とすれば、1,540円〜3,960円です。1回使い切りであることを考えると、当然ながら顧客は富裕層が中心で、商品を取り扱っているスパやブティックの多くは都市部に集中しています。対してULTAは、高級ブランドからマスマーケットをターゲットとした商品まで幅広く扱っているというのが強みではありますが、都市部よりも地方に店舗が多いことからも想像がつく通り、価格帯は総じて低めに設定されており、マス層が顧客の中心となっています。またその点が、競合であり世界的な規模と知名度では上回るSephora(セフォラ)との最も重要な差別化ポイントでもあります。

そこでまずは、Pursomaの既存ブランドについて学んで理解をし、新コレクションにとっての競合と市場をリサーチした上で、このプロジェクトの状況分析をしました。そしてこの状況分析をすることで、プロジェクトの明確なゴールが見えました。 私たちが考えたゴールは次の3つです。

1. 商品の透明性と、自然の力で心と体を活性化させることの重要性をハイライトした美しいパッケージをつくり上げること。また、その重要性に気づいていない、または気付きはじめているULTAの顧客の心に響かせること。

2. 現代社会でウェルビーイングな状態でいるために必要な習慣の1つとして、Pursomaの存在があるという認識を持ってもらうこと。

3. Pursomaの既存コレクションから、新コレクション発表への流れをスムースにし、既存顧客を困惑させないようにすること。

Pursomaにはすでに強いメッセージがあり、社会問題にも取り組んでいたので、ブランドDNAのプロセスは非常にスムースに進みました。彼女たちの思いを汲み取り、まとめ上げながら、新しいターゲット・オーディエンスに焦点を合わせていきました。ブランドDNAがしっかりしていればしているほど、それを体現するビジュアル・アイデンティティも無理のない自然な流れで進めることができます。

ビジュアルを作成する上で難しかったことといえば、Pursomaにとっては低価格ラインではあるもの、ULTAの顧客にとってはなおも高級価格帯。その2つの違う視点両方にとって適切なビジュアルをつくることでした。「透明性」も踏まえた透明感のある柔らかいイラストや、文字要素を必要最低限まで削ることで増やしたネガティブスペース、控えめな高級感を出すメタリック印刷などを使って、その課題を解決しました。

また、ロゴは予算上変えられないとのことでしたが、既存ロゴのほんの一部が、洗練されたPursomaの雰囲気を壊していたので、その部分のみ変更することを提案。変更点そのものは小さい部分だったので、既存商品のパッケージを変更する必要は避けられ、既存顧客が新しいロゴを見ても違和感のない程度に抑えつつも、第一印象を変えることができたのではないでしょうか。

ULTAのウェブサイトにて発売中です。

商品とブランドの透明性とその自信を示すため、パッケージの一部を文字通り透明に。

[Photos and styling by Hitomi Watanabe Deluca]