ここ数年、ニューヨークで注目されている健康食材の一つに、発酵食品があります。発酵食品大国と呼ばれる日本には、醤油や味噌をはじめとする種類豊富な発酵食品がありますが、それらを含む世界中の発酵食品がアメリカで見直され、普段の食事に多く取り入れられるようになりました。2019年以降もその流れはさらに加速すると言われており、腸内フローラ(gut flora)のバランスを整える生きた微生物プロバイオティクス [発酵食品に多く含まれる] や、腸内善玉菌の増殖を促すプレバイオティクス [オリゴ糖、食物繊維など] を含んだ食品がどんどん増える見込みです。

我が家でも意識してプロバイオティクスを摂るようにしていますが、その中でもよく飲食している発酵食品3つと、それぞれのおすすめのメーカーや、その食品を使った簡単なレシピなどを紹介します。

1. ケフィア(Kefir)

ケフィアはヨーグルトに似た発酵乳飲料。一般的なヨーグルトは乳酸菌のみで発酵して作られるのに対し、ケフィアは乳酸菌と酵母の複合発酵で作られており、ケフィアはヨーグルトに比べて種類も量も格段に多いプロバイオティクスを含んでいます。また、メーカーによって差はありますが、ヨーグルトに比べてタンパク質が豊富で糖質は少なめというメリットもあります。

日本では「ケフィアヨーグルト」と呼ばれることが多いようですが、食品衛生法により、そのまま食べられる状態では販売されておらず、「ケフィアの素」を使って家で作るしか方法がないようです。

対してアメリカでは、乳飲料としてボトル形状でスーパーなどで一般に販売されており、そのまま飲むことができます。飲むヨーグルトに非常に似ていますが、ヨーグルトよりも酸味が強いのが特徴的。

Five Acre Farmsのケフィア

今まで試したどのメーカーのケフィアも美味しかったですが、気に入ってよく飲んでいるのがFive Acre Farmsのもので、酸味は強いですがそのままでも美味しく飲むことができ、毎日1杯は飲むようにしています。プレーン以外のもので美味しいものにはまだ出会っていないので、プレーンケフィアを使って自分たちで以下のようにアレンジしています。

果物やグラノーラ、はちみつなどと合わせて

まさにヨーグルトのようにいただく、シンプルないただき方。

オーバーナイトオーツに

ケフィアとオーツを2:1の割合で合わせ、密閉容器に入れて冷蔵庫で一晩寝かすと、朝食にそのままオートミールとしていただくことができます。オーツそのものに歯ごたえが残るので好き嫌いが分かれる方法ですが、忙しい朝に栄養もボリュームも満点の朝ごはんが出来上がっているのはとても便利。

スムージーに

普段牛乳やヨーグルトで作るスムージーをケフィアに変えるだけで、栄養価の高いものになります。

ドレッシングに

私はコールスローに似たサラダを作る際に、マヨネーズではなくクレームフレーシュを使ったドレッシングを作るのですが、これをケフィアで作ってみたら、同じように美味しいドレッシングが仕上がりました。このレシピはまた近いうちに紹介できたらと思っています。

焼き菓子に

我が家ではバターミルクパンケーキやバターミルクビスケットをよく作るのですが、このバターミルクをケフィアに代用することができます。使用する量はそのままで、バターミルクで作るときとほぼ同じようにふわふわに仕上がります。ただ、加熱によって乳酸菌は死滅してしまうので、プロバイオティクスとしての働きはなくなってしまいますが、栄養成分には変わりありません。

プレーンのケフィアに、はちみつと少しのターメリックを足しています。

2. コンブチャ/紅茶キノコ(Kombucha)

アメリカでコンブチャが流通するようになってかなり久しいですが、流行りだした頃はその名前のせいで私もかなり混乱しました。昆布茶と混合してしまうこの名称のルーツには諸説があり、Wikipediaでは、英語話者の勘違いによって生まれた名前だとされています。

もちろん昆布茶とは全く別物のコンブチャは、紅茶や緑茶がベースの発酵飲料。プロバイオティクスを多く含んだ発酵飲料を手軽に飲めるということで人気を博しています。

ただ、コンブチャを選ぶときは注意が必要です。まずは、加熱殺菌(pasteurization)されていないかどうか。発酵を抑制するために、加熱殺菌をしているコンブチャがありますが、加熱をすることによって生きた微生物は死滅してしまうので、プロバイオティクスの効果がなくなっていまします。よって、加熱殺菌されていないものを選ぶことが大事です。「raw」や、「live probiotics/live cultures」と表記されているものを選びましょう。

次に、糖分。砂糖を使って発酵させるので、幾分かの糖分は必要ですが、より飲みやすくするために、さらに砂糖を足している商品がほとんどです。フレーバーによってその量に微差はありますが、例えばニューヨークで最もよく見かけるGT’sのコンブチャは1本(16oz)につき12-16g、Health Aidは12g、KeVitaは14-16gの砂糖が入っています。世界保健機関がガイドラインとしている1日の砂糖摂取量が25gとされていることを考えると、これはかなりの量です。健康飲料どころか、逆効果となってしまって本末転倒です。

それらを踏まえた上で、私が一番気に入っているのが、ニューヨーク生まれのPilotのTurmeric Aloeコンブチャ。糖分は1本につき4gで、ターメリックが入っているので程よくスパイシー。後味もすっきりとしています。

Pilotのコンブチャ

とは言いつつも、甘みのある炭酸水があまり好きではないので、実はコンブチャも飲むことはあまりないのですが、コーラなどの炭酸飲料水が好きな方には、健康的な代用としてこれ以上ない商品だと思います。

そこで私は代わりに、コンブチャをドレッシングとして使っています。酸味があるので、ビネガーの代わりとして使い、オリーブオイルと塩こしょうと合わせて混ぜれば、コンブチャドレッシングの完成です。

程良い酸味と甘味があるので、コンブチャはドレッシングにぴったり。今回はゴートチーズ、ペピタス、レモンゼストと一緒に。

3. ザワークラウト(Sauerkraut)

キャベツを発酵させることによって作るザワークラウトは、いわゆるキャベツのお漬物。我が家はブラートヴルストが好きでよく食べるのですが、ザワークラウトなしではあり得ないというほどザワークラウトも大好きで、冷蔵庫に常備しています。

プロバイオティクスが豊富なのはもちろん、食物繊維や、加熱していないのでビタミンC、B、Kも多く含まれています。

Kühneのbarrel sauerkraut

よく買うのは、ドイツのメーカーKühne社のもので、キャベツと塩だけを使った純粋なザワークラウト。スーパーで見かけるものの中には、ビネガーを使ったものや、砂糖や保存料を足しているものなど、本当のザワークラウトではないものも混じっているので注意が必要です。

なお、ザワークラウトは自宅でも比較的簡単に作ることができます。室温で1週間程度発酵させることで作れ、その後は冷蔵庫で1年近く保存することができます。

ブラートヴルストにザワークラウトとマスタード

[Photos and styling by Hitomi Watanabe Deluca]