ネットの発達により世界が身近になった今、国境を越えて仕事をすることのハードルが下がり、またコロナ禍によってリモートワークが定着したことで、世界中の仕事をどこにいてもできる環境が発達しました。
この環境の変化により競争率が高くはなりますが、「海外でデザイナーとして働いてみたい」という気持ちを行動に起こしやすくなったのも事実。
私自身は雇われる側を経験したあと、今は雇う側としてたくさんのデザイナーの応募を見ていますが、最初のメール1つをとっても全然印象が違うのは当然で、ポートフォリオに目を通すか否かの判断材料にもなります。
そこで今日は、アメリカでデザイナーの仕事をアプライするためのシンプルで効果的なヒントを紹介しようと思います。
申し込み先の会社の規模や種類によって内容も変わってきますが、基本的には「デザイン事務所」という視点でのポイント、そして今回は私たちHI(NY)の個人的な目線ではなく、より一般的なアドバイスに絞って紹介します。
まずメールを送る
アメリカには新卒一斉採用のシステムがなく、採用時期も設けていないため、入社時期は人それぞれ。企業は求人内容をウェブサイト等に掲載していますが、デザイン事務所となると、求人をしているかどうかすらわからないとこも決して少なくないので、申し込む準備さえ整えば、とりあえずメールで問い合わせます。ただ小さい事務所ほど、人を1人雇うことの負担が大きいこともあり、タイミングというのは非常に重要。どんなにいい志願者が来ても、そのとき空いているポジションがなければ断らざるを得ません。ですので、もし断られたとしても、別のタイミングであれば雇われていた可能性も高いわけなので、もし1回目の感触が非常に良かったと感じたならば、数ヶ月後にもう1度リマインダー的に再度問い合わせてみるのも1つの方法です。
メールの送付内容
ファースト・コンタクトのメールで送るものとして、アメリカではレジュメ(履歴書)と、カバーレターという志望動機書を送るのが一般的。デザインの仕事の場合はこれにポートフォリオをあわせて送ります。
応募先が企業の場合はカバーレターは必須のところがほとんどですが、デザイン事務所となるとカバーレターは必要ないところも多く、カバーレターがないからと言って選考の対象にならないということはまずないと思います。求人している場合は、カバーレターが必須かどうか記載されているので、確認してみてください。ただカバーレターがない代わりに、メールの本文では希望しているポジションなど必要な情報を明確かつ簡潔に記載しておくのは必要です。
レジュメ(履歴書)のコツ
日本のそれとは全く異なるアメリカのレジュメの書き方については、さまざまなHow To記事が出ているのでそちらを参考してみてください。
一般的に、レジュメのスペルミスや文法のミスは、致命傷とアメリカでは言われています。英語が完璧でないことそのものではなく、履歴書という採用に関わる一番大事な書類にスペルミスをしてしまうという注意力のなさを露呈しているからで、これは日本でも同様だと思います。けれどデザイナーというポジションでは最も大事なのはポートフォリオであって、レジュメは二の次。もちろんミスがないに越したことはありませんが、神経質になってそこに時間をかけすぎるのであれば、その分ポートフォリオに時間を割いてください。
レジュメのデザインも、デザイナーとして自分をアピールするツールの1つ。あまりにデザインしすぎていて読みづらいのは逆効果ですが、レジュメのデザインがWordでタイプしただけのようなものや、文字揃え等の基本的なことができていない場合は、それだけで採用されない可能性をあげてしまいます。
レジュメに関して細かい部分だと、PDFにする際に、過去の勤め先やSNSアカウントなど、リンクが貼れる箇所にはできるだけ貼ってくれていると、とても親切な印象がします。
エクスペリエンス(職務経験)
レジュメの一項目になりますが、中でも一番重要視されるのは職務経験。どんな会社でどんなポジションだったかということももちろん考慮しますが、それよりも与えられたプロジェクトをどのような責任を持ってどのように問題解決したかを雇用者は知りたがります。レジュメに事細かく記載する必要はありませんが、簡潔ながらもきちんとアピールできる内容を記載をしておくと、有利に働くかもしれません。
新人を雇って育てるという発想がないアメリカでは、求人の応募資格に実務経験年数があることがほとんどですが、あくまで目安なので、必ず満たしていないといけないというわけではありません。かと言って、実務経験ゼロや、希望しているポジションとは全く関係のない職務経験しかない場合は当然振り落とされます。
逆に、年数は全く足りない場合でも、フリーランスのプロジェクトを多数こなしている場合はOKと見なされることも多いので、職務経験が足りないのであればどんどんフリーランスのプロジェクトで経験を積んでいくことをおすすめします。
ポートフォリオ
繰り返しにはなりますが、一番大事なのはポートフォリオです。レジュメにスペルミスがあっても、職務経験が足りなくても、それらを全て帳消しできるくらいの威力を持つことができます。逆を言えば、ポートフォリオが良くなければお話になりません。今すぐポートフォリオ作りに取り掛かってください!
私が大学を卒業した頃は、実物の作品をドロップしにいくことがまだ主流でしたが、時は流れ、もちろん今は全てデジタル。オリジナルのポートフォリオ・ウェブサイトが一番理想ですが、難しい場合はBehanceやDribbbleなどのようなオンラインポートフォリオでも構いません。ただどうしても自分の色を出しにくいという点で少々不利ではあります。アップデートしやすいという点では便利だと思うので、ウェブサイトにはまだ更新できていないごく最近の作品を見せるという意味での使い方が賢いかもしれません。
PDFのポートフォリオでも全く問題はありませんが、美しく見せるにはどうしても容量が大きくなりがちなので、メールへの添付ではなくサーバーにアップロードしてPDFへのリンクを送る方が好まれます。
ポートフォリオは、量より質。デザインの幅を見せるという意味でたくさん掲載するのは効果的ですが、数を増やすことよりも、自信ある作品を厳選し、それを最高の状態で見せることに労力を割いてください。可能であれば、デザインプロセスも見せ、どのような思考プロセスで問題を解決したかを書いてください。チャンスの幅が広がります。
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最後に、申し込む際には、ポートフォリオやレジュメなどのビジュアルはもちろんのこと、自分の発するメッセージや態度にも一貫性を持って、ブレない姿勢を貫いてください。応援しています。