メトロポリタン・オペラ Photo from The Met Opera

オペラのシーズンがやってきました。メトロポリタン・オペラが来週から始まります。

Giorgioの影響で私がオペラを鑑賞し始めたのが10年以上前。今ではすっかりオペラの虜です。そしてニューヨークといえばもちろん、メトロポリタン・オペラ。キャストやセットが本当に豪華で、ヨーロッパの歌劇場と比べても、メトロポリタン・オペラほど豪華な舞台セットは見たことがありません。通称「The Met(ザ・メット)」としてニューヨーカーに愛されるメトロポリタン・オペラは、どの一流歌劇場にも引けを取らない、素晴らしいオペラハウスです。

私は毎シーズン5〜10くらいの演目をメットで鑑賞しています。少なくともこれまでに50以上のオペラを見てきた経験から、メトロポリタン・オペラをベストに楽しむ12のコツを紹介します。

メトロポリタン・オペラを最高に楽しむ12のコツ 前半
1: メトロポリタン・オペラの基礎知識
2: チケットの種類
3: どのオペラにするか?
4: どの席にするか?
5: 夜公演vsマチネ(昼公演)
6: メトロポリタン・オペラに行けない人は
最後に: メトロポリタン・オペラ初心者の方におすすめの今シーズンのオペラ

メトロポリタン・オペラ Photo from The Met Opera

1 メトロポリタン・オペラの基礎知識

メットのシーズンは9月末から5月までで、2017-18年シーズンは、来週25日から始まります。基本的には、月曜から土曜までの夜の公演と、土曜のマチネ(昼公演)、合計週に7公演あります。数多くあるオペラの中から、シーズン毎に25+の演目がローテーションしており、同じ演目が数年続けて上演されることもあれば、1シーズンだけ上演されて、再演されるまでに数年空くこともあります。

毎シーズン、いくつかはニュープロダクション(=新しい舞台セット)として用意され、そのシーズンの目玉となります。ニュープロダクションには、スター歌手も起用されるため、人気のチケットになります。

2017-18シーズンでは、26のオペラが上演されることになっており、そのうち5つがニュープロダクションとなっています。

ゼフィレッリのプロダクションによる、プッチーニの『トゥーランドット』 Photo from The Met Opera

2 チケットの種類

チケットは、メットのウェブサイトで購入可能です。メットでは、チケット価格にダイナミック価格システムを取り入れており、つまり、その売れ行きなどで価格の変動があります。チケットには以下の種類があります。

サブスクリプション

6〜9つのオペラがセットになったチケットで、一般販売の前に購入できるため、希望の席が確保しやすく、割引もあります。ダイナミック価格の変動に影響される心配がありません。

クリエイト・ユア・オウン

サブスクリプションが既に演目が選ばれているのに対して、自分で好きなオペラを組み合わせてセットで購入できるチケットです。3つから購入可能で、5つ以上まとまて購入すると10%の割引となり、サブスクリプションよりは後にはなりますが、これも一般販売以前に購入できます。私はいつもこの方法でシーズン前にまとめて購入し、シーズンが始まったあと、その都度評判のいいオペラを追加で個別購入しています。

一般販売

1枚から購入可能。

ラッシュ・チケット

よりいろんな人にオペラの機会を与えたいということで用意されている超割引チケットで、当日オンライン販売のみのラッシュ・チケットは、均一$25。100枚ほどのチケットが確保されており、しかもかなりいい席なのだそうです。詳しくはこちら

エアーのプロダクションによる、プッチーニの『マノン・レスコー』 Photo from The Met Opera

3 どのオペラにするか?

私も最初はそうだったのでよくわかりますが、初心者の方が一番悩むと思われるのが、どのオペラにするかということだと思います。選ぶ方法もたくさんあるので、それぞれ紹介します。

A 作曲家、または作品から選ぶ

一番簡潔な選び方です。
初心者の方でも楽しめる確率の高い作曲家を3人選ぶのであれば、もちろん賛否両論はあると思いますが、ヴェルディ、モーツァルト、プッチーニの3人です。(ロッシーニも迷う…)

演目となると、聞いたことのあるメロディが入っているオペラや、テンポ早めのオペラの方が、最初は良いのかもしれません。そこも踏まえつつ、後述の人気歌手や舞台セットなども考慮した、メット今シーズンのおすすめオペラを最後に紹介します。

B 歌手から選ぶ

パフォーマンスによって満足度も本当に違ってくるので、演者選びもとても大事です。今シーズン出演してる歌手の中で人気なのは以下のとおり:

アンナ・ネトレプコ(Anna Netrebko)彼女が出るだけでチケットの売れ行きが2割増しになると言われるほど超人気歌手

プラシド・ドミンゴ(Plácido Domingo)世界3大テノールの1人。76歳にしていまだ衰えない美声の持ち主

ジョイス・ディドナート(Joyce DiDonato)歌声から演技まで完璧なスキルを持ち、現代最高とまで言われるメゾソプラノ

ソンドラ・ラドヴァノフスキー(Sondra Radvanovsky)すっかりトップ・ソプラノの仲間入りをした、独特な声質の持ち主

ステファニー・ブライス(Stephanie Blythe)脇役ながらも圧倒的な存在感を放つ、大御所メゾソプラノ

その他、同じく今シーズン出演してる歌手の中で、私の個人的おすすめ歌手は、Jamie Barton (メゾソプラノ)、Christine Goerke (ソプラノ)、Peter Mattei (バリトン)、René Pape (バス)、Bryn Terfel (バスバリトン)、Michael Volle (バリトン)などがいます。

C プロダクションから選ぶ

演者はそれぞれ世界各地で公演するのでメトロポリタン・オペラ以外でも見られる可能性がありますが、他には変えられないThe Metの見どころといえば何と言ってもその豪華で大掛かりな舞台セット。毎回大きな楽しみの1つです。

最近のニュープロダクションの傾向として、現代寄りの時代や場所に舞台を変えたり(例えば『リゴレット』の舞台が60年代のラスベガスになったり、『コジ・ファン・トゥッテ』は50年代のコニーアイランドが舞台に。)、抽象的でモダンなセットが増えています。

けれど私個人的には、演目の舞台設定に忠実で、クラシックなセットが好きです。やはり見た瞬間の感動は圧倒的で、細やかかつ煌びやかなデザインには溜息が出てしまうほど。

そんなクラシックな演出の代表といえば、巨匠フランコ・ゼフィレッリ(Franco Zeffirelli)。ゼフィレッリのプロダクションは、ここ数年どんどん新しいものに入れ替えられてきているため、もう少ししか残っていませんが、中でも有名なのがプッチーニの『ラ・ボエーム』と『トゥーランドット』。

そして最近の演出だと、『フィガロの結婚』や『マノン・レスコー』を担当したリチャード・エアー(Richard Eyre)や、ドニゼッティ女王三部作を担当し、今シーズンも『トスカ』と『ノルマ』のニュープロダクションを抱える超売れっ子のデイヴィッド・マクヴィカー(David McVicar)などがおすすめです。

60年代のラスベガスを舞台にしたヴェルディの『リゴレット』 Photo from The Met Opera

4 どの席にするか?

聞こえ方、見え方、の両方を考えて、純粋にオペラそのものを楽しむのであればやはりオーケストラ席が一番だと私は思います。ただし、「Orchestra Rear」の席は、頭上に2階席がくるため、音質がうんと落ちると言われています。オペラの雰囲気を楽しむのであれば、ボックス席を。なお、座席表はここで見られます

5 夜公演 vs マチネ (昼公演)

夜公演は19:30か20:00に始まるのがほとんどで、上演時間は大体最低3時間、長いと4時間以上に及ぶものもあるので、終わるのは23時以降になります。私は平日にそれをすると疲れてしまうため、ここ数年はマチネのみ。けれど観客がドレスアップをするのは夜公演ですし、オペラらしい雰囲気を楽しむのであれば、絶対夜をおすすめします。

マクヴィカーのプロダクションによる、ドニゼッティ女王三部作の1つ、『ロベルト・デヴリュー』 Photo from The Met Opera

6 メトロポリタン・オペラに行けない人は

アメリカでは「Live in HD」、日本でも「METライブビューイング」として知られる、映画館でのオペラ鑑賞プログラムがあります。もちろんオペラハウスで生で聴くのとは全く異なりますが、オペラハウスで鑑賞するよりも気楽に行けるし、演者の表情までよく見えたり、インターミッションにはセットの裏側やアーティストのインタビューなども聞けたりと、なかなか楽しいプログラムになっています。

なお、少なくともニューヨークではこのLive in HDが大人気のため、8月の発売開始とともにチケットがすぐに売れ切れてしまいます。また、メットのように座席指定ができるわけではなく先着順のため、上映開始の1時間以上も前から席を取りにいく人が多く、よって、開始10分前ともなるとまともな席が残っていないということがほとんどです。

メトロポリタン・オペラ初心者の方におすすめの今シーズンのオペラ

音楽、ストーリー、出演歌手、舞台セットなど全てを考慮した上で、今シーズンの演目の中から、メトロポリタン・オペラ初心者の方にオススメのオペラを5つ選びました。

1 プッチーニ『ラ・ボエーム』

ゼフィレッリによる舞台セットが素晴らしい。とても悲しいストーリーですが有名なオペラなので、耳にしたことのあるアリア(聞かせどころ)もたくさんあるので楽しみやすいです。

2 ドニゼッティの『愛の妙薬』

オペラ・ブッファ(喜劇)でテンポも良いので見やすいオペラです。有名なアリア「人知れぬ涙 (Una furtiva lagrima)」は誰もが聞いたことがあり、一番盛り上がります。(リンク先YouTubeで聞けます)

3 ベリーニ『ノルマ』

マクヴィカーによるニュープロダクション、かつ人気歌手のラドヴァノフスキー&ディドナートの共演(共演は10/11までの公演のみ)とあって、恐らく一番期待度の高いオペラ。アリア「清らかな女神 (Casta Diva)」が非常に有名です。

4 モーツァルト『フィガロの結婚』

エアーの舞台セットが美しいのはもちろん、非常に有名なオペラ・ブッファ(喜劇)で、終始楽しめます。序曲やアリア「恋とはどんなものか (Voi che sapete)」は誰もが聞いたことがあるはず。

5 プッチーニの『トゥーランドット』

ゼフィレッリによる圧巻の舞台セットが見どころ。そして一番の聞き所は、有名すぎるアリア「誰も寝てはならぬ (Nessun dorma)」です。

後半では、実際にメットにてオペラを楽しむコツについて紹介します。