3年間勤めたMTVから転職先として選んだのが、The 7th Artという、高級コンドミニアムやホテルのブランディング&マーケティングを主とするデザイン事務所でした。MTV時代の上司であったディクラ(ディクラについてはここでも少し紹介しています)が紹介してくれたポジションでした。

MTVでのデザインには、常に新しいものを何よりも求められていました。斬新で、クリティティブで、クールでポップ。そんなデザインを毎日毎日作り上げる、そんな職場でした。

そしてそのほぼ真逆とも言えるのが、The 7th Artでの仕事でした。ターゲット・オーディエンスが全く違うこと(ユースvs裕福層)や、デザインのタイプが真逆(ポップvsラグジュアリー)ということももちろんですが、それよりも一番大きな違いだったのは、「デザインで問題を解決する」という点でした。MTVのようにデザインをすること自体が課題なのではなく、まず何かしらの課題が既にあり、それをデザインの力で解決するという点です。

例えば、ホテルを開業したものの、なかなか客足が伸びず黒字にならない。そこで何とかして欲しい、と依頼を受けます。そこで私たちは、マーケティング、そしてブランディングの観点から問題点を見つけ、対策を練り、戦略を考え、それをデザインに落とし込み、問題を解決する。それがプロセスでした。

もちろん、これから立ち上がる新ブランドのブランディング・プロジェクトにもたくさん携わりました。新しいブランドにも課題はたくさんあります。

1つのプロジェクトに数ヶ月、時には1年以上かけて進めていくことも珍しくなく、毎日のように新しいデザインを作り出していたMTV時代とはやはり全く異なりました。でもだからこそ、自分たちのデザインで、お客様の問題を解決したり課題をクリアできたときの達成感はそれは大きく、本当にやりがいのある仕事でした。

私たちHI(NY) designでは、MTVとThe 7th Artという全く違うクリエイティブ・プロセスをもつ2社両方から得た経験を最大限に活かしています。中でも私たちにとって、過去の経験から得た1番の強みは、やはりこの「デザインで問題を解決する」力だと自負しています。

ニューヨークの象徴的存在であったホテル、プラザ・ホテルが高級コンドとして生まれ変わった際に、ブランディングを担当しました。プラザホテルが舞台の有名な絵本、「エロイーズ」を使ったデザインで、インパクトを。
アメリカ、ダラスのマンダリン・オリエンタルのブランディングを担当。マンダリン・オリエンタルという既に確立したブランドを活かしつつも、他との差別化を図るという点が難しかったプロジェクトです。
2008年のリーマン・ショックまでは、ドバイを中心とする中東の大規模プロジェクトが続きました。どれも桁外れな内容でしたが、その一つに、世界初の「ファッション島」を作り上げるというプロジェクトがあり、そのブランディングを担当しました。カール・ラガーフェルドをメインデザイナーとして大々的に発表しましたが、残念ながらドバイ・ショック後にプロジェクトそのものが破綻。