ピザボックスと前菜ボックス

今日紹介するブランディング・プロジェクトは、世田谷区にあるピザレストラン「BARE PIZZA POCO(ベア・ピザ・ポコ)」です。

プロジェクトの概要

クライアントは、世田谷区にあるPizza Stand Pocoというピザレストラン。2014年開店の1号店を皮切りに、安定した味とサービスの店として複数店舗を展開されていました。しかし、これまでブランドという視点で意識する機会があまりなく、基盤がないままその都度追加されてきたタッチポイントや、オーナーである出井雄喜さんの思いと現状に差が生まれている状態となっていました。ブランドとしての今後の方向性を定め、一貫したメッセージを伝えるため、ブランディングに乗り出しました。

全面改装した宮の坂店の内装
(左)ショップカードと缶バッジ (右)大人気の自家製レモンスカッシュ

ブランディングのプロセス

出井さんから最初にお問い合わせをいただいたのは2019年でしたが、スケジュールの関係でプロジェクト開始は2020年4月という内容でのご発注となりました。ところが2020年4月7日に第1回目となる緊急事態宣言が発令。レストラン業界は直接的な打撃を受けました。

先が全く見えない中、プロジェクト自体を延期させることも考えましたが、「人々の価値観も変化し、自分の生き方、ビジネスの本質が問われると感じています」と話された出井さんと、こんな状況だからこそ、ブランディングというクリエイティブな発想で、明るい未来での飛躍を見据えた戦略を一緒に立てていこうということになりました。

メニュー。POCOの思いや、こだわりの食材についても紹介しています。
(左)こだわり食材の一つ、アジアーゴチーズ (右)食器類も選びました

「ピザを通して、もっとたくさんのひとに楽しい時間を過ごしてもらいたい」

そんな出井さんの思いが、このブランディングの原点でした。

レストラン名であるPOCO(ポコ)とは、イタリア語で「少し」という意味。みんなで集まった時にわいわいと食べる「楽しい食べもの」であるピザを小さいサイズで提供することによって、大人数で複数のピザをシェアするのはもちろん、ひとりのお客さまにもこの楽しい時間を提供してきました。そしてPOCOのピザは、お手頃な料金設定やカジュアルな雰囲気とは裏腹に、イタリアからの上質輸入食材やオーガニック食材をふんだんに使った、本格派の絶品ピザ。きちんと美味しいピザを、チェーン店のような手軽さで子供からお年寄りまでみんなに楽しんでもらいたいというのが、他とは違うPOCOならではの思いでした。

実際にお店を訪れたことがある方には、その思いが店員さんとの触れ合いによって伝わってはいたものの、ウェブサイトなどを含むそれ以外のタッチポイントではそのメッセージはなかなか伝えきれておらず、また赤を多用したピザチェーン店の雰囲気と、本格ナポリピッツェリアの雰囲気が混在したような印象となっていました。今回のブランディングでは、POCOはその両方それぞれの良さを持ちつつも、どちらのグループにも当てはまらない新しいタイプのピザレストランとしてカテゴライズする必要があると考えました。

POCOのブランド価値をわかりやすく伝えるため、3つの「たのしい」を定めました。

1. ひとりでたのしい、みんなでたのしい

POCOという名前の通り、小さいサイズはPOCOの大事な価値の1つ。ただ単に小さくした、というわけではなく、家族や友達とシェアしてたのしいのはもちろんのこと、ひとりでもたのしんで欲しいというチームの思いが詰まっています。

2. カラダがたのしい

美味しいピザを作るためにこだわりの上質な素材を使っていたら、自然と身体に優しいピザになった、というPOCOのピザ。子供連れの家族も安心していただけます。

3. スタッフがたのしい

POCOを訪れたことのある方は、「スタッフがたのしそうだから私もたのしい気持ちになれた」と話される方がたくさんいらっしゃいます。スタッフ自身がたのしみ、そしてマニュアルの型にはまらない心のこもった接客は、POCOの大きな魅力です。

通称は「ポコ」のまま、店舗名はPizza Stand PocoからBARE PIZZA POCOへと変更。BAREは英語で「ありのままの、飾らない」という意味です。余分なものが入っていないピザ、という意味はもちろんのこと、ありのままで楽しく働くスタッフも表現しています。PIZZAの読みは「ピッツァ」ではなく「ピザ」。「ベア・ピザ・ポコ」というリズミカルな音が、POCOのたのしさを表しています。

出井さんからお話を伺う中で、何気ない会話の中からこんなエピソードをお聞きしました。

「ある日、レストランにいらしたご年配のお客さまが、にこにことお話してくれたんです。『孫たちが小さいときには、よくうちに遊びに来てみんなでピザを食べたの。今はみんな大きくなって、なかなか来られなくなってしまったけれど、あの頃を思い出して急に食べたくなっちゃった。でも、ふつうのピザって大きいでしょ?ここのピザはひとりでも食べられるから嬉しいわ』このお客さまとのやりとりで、私たちスタッフも嬉しさでいっぱいになったんです。」

このエピソードには、POCOの「らしさ」が詰まっていると思いました。そのままブランドストーリーの一部として使用させていただくことになりました。

ビジュアル・アイデンティティには、ピザチェーン店でも本格ピッツェリア店でもない新しいピザレストランとして、POCOのたのしさが伝わるビジュアルを用意させていただきました。スタイル・ガイドを元に、メニュー、ユニフォーム、ピザボックス、ウェブサイト、写真などを一新。そして宮の坂店は、インテリアも全面改装し、絞ったターゲット層を意識した明るく健康的で気持ちのいい空間を作り上げました。

ウェブサイトのトップは、ピザの写真ではなくスタッフの皆さんの楽しそうな写真を選びました。

オープン後のPOCO

コロナ禍による自粛の中ですが、無事オープンを迎えました。度重なる緊急事態宣言で臨時休業や時短営業などが続きましたが、厳しい状況の中でもPOCOらしいたのしい雰囲気でお客様も大満足されているようです。スタッフの皆さんも、POCOの方向性が明確になったことでより士気が上がり、また人員募集の際には、POCOの思いに共感したという方が増え、これまであまり応募が多くなかった女性なども増えたそう。ワクチンの普及がようやく進み、経済活動の活発化が期待される中、これからが正念場です。

長引くテイクアウト需要に対応し、今後はPOCO大人気の自家製レモンスカッシュや自家製レモネードのテイクアウトをより利用しやすくし、またお問い合わせの多い自家製レモンシロップも販売が始まる予定です。もちろん素敵なパッケージを準備中ですので、どうぞご期待ください。

一流店でしか使わない上質な食材ばかりを使っているPOCOのピザは軽やかで絶品ですが、美味しさはもちろんのこと、明るくポジティブで気持ちの良いスタッフのサービスが印象的で、お店にいくとまさに「たのしい」気分になります。気持ちが落ち込みがちなコロナ禍、ぜひPOCOを訪れて元気をもらってみてください。

宮の坂店|東京都世田谷区宮坂1-24-6 宮坂区民センター内|03.6413.1800

若林店|東京都世田谷区若林4-3-12 1F|03.5787.5075

 

barepizzapoco.com

 

(左)若林店のサイネージ (右)美味しそうです
(左)焼く前から美味しそう (右)人気のフライドポテト