前編では、破水に始まり、病院でチェックインした流れについて書きました。続きを紹介します。

麻酔に関しては、自分のタイミングで投与を決めていいとのことで、私は陣痛が酷くなる一歩手前くらいの時点でお願いしました。促進剤を投与してから2時間後でした。

ベッドの上に背中を丸めるように座り、後ろから腰のあたりに局部麻酔(local anesthesia)の注射をし、カテーテル(catheter)を通します。15分くらいで効き始めるとのことでしたが、一瞬で嘘のように痛みがなくなりました。体全体が少しポカポカとし、なんとも言えない心地よさでした。

この麻酔でトイレにも行けなくなるので、尿道カテーテル(urinary catheter)もします。

この時点で、陣痛が2、3分に1回の割合で来てるとのことで、痛みはありませんが、陣痛の波はお腹にくる圧迫感でわかりました。麻酔のおかげで、少し眠ることができました。

夜11時ごろナースに起こされ、何やらドクターとナースたちがバタバタとし始めました。赤ちゃんの心拍数が下がっているとのこと。指示通り身体を右にしてみたり、左にしたり、座る姿勢にしたり、といろいろ様子をみましたが心拍数が上がらなかったので、急遽帝王切開(caesarean section、”C-section”)をすることに決定。

その30分後には手術室へ、そしてその30分後には赤ちゃんが生まれました。最後はあっという間の1時間でした。

手術室では大勢のドクターとナースが慌てているようだったので、それはそれは不安でした。身体が震えるほど怖かったです。そこに手術立ち会いの準備が整った夫が入って来たので、ずいぶん気が楽になりました。強い麻酔のおかげで痛みは全くありませんでしたが、下半身麻酔だったので意識はありました。

生まれた赤ちゃんをまず最初に夫が抱っこ。そして、後から考えても自分ですごいなと思うのですが、この最初の抱っこの瞬間を、私は手術の縫合の最中に、片手で持ったiPhoneを駆使して写真を撮りました。強い麻酔のせいで呼吸さえもしづらくなっていたというのに。でもおかげで貴重な写真を残すことができました。

そして縫合が終わり、赤ちゃんを私の胸に置いて、リカバリールームへと移動。ここで術後の検査等に約4時間。意識が朦朧として私のメモにもこの4時間についての記載があまりないのですが、ただ部屋がとても寒かったことだけはよく覚えています。

そしてやっとマタニティー階の病室(mother-baby unit)へ。個室は、前もって予約をすることはできないと言われており、案の定そのとき個室の空きはなく、泣く泣く2人部屋へ。とても狭く、夫が泊まれるスペースも椅子のみでほとんどなかったので帰ってもらい、部屋は相変わらず寒く、術後の痛みも酷くて、今思ってもこの時が一番辛かったように思います。最初の夜は生まれた赤ちゃんと一緒に過ごすことが大事なんだとナースに言われながらも、とてもそんな余裕がなかったので、新生児室(nursery)で預かってもらいました。

翌日には個室の空きが出たのですぐに移りました。相部屋に比べてうんと広く、パートナーの簡易ベッドやシャワーも完備していました。

術後もそのままエピデュラルで麻酔をしており、痛みが酷ければ自分で増量ボタンを押して追加できるというシステムでしたが、私はほとんど追加をしていなかったので、術後翌日には基本量を減らし、その翌日にはエピデュラルを外しました。代わりに錠剤の痛み止め(painkiller)を処方してくれました。

アメリカでは、自然/無痛分娩の場合は翌日退院、帝王切開の場合は3日で退院が一般的ですが、私は退院予定日に血圧が少し高かったため、少し様子をみるということで4日後に退院となりました。

この入院中、最初の数日間は授乳(breastfeeding)がうまくいかなかったのですが、病棟で行われている授乳クラス(lactation class)に参加したり、巡回している授乳コンサルタント(lactation consultant)に相談できたのはとてもありがたかったです。

この4日間は本当に本当に辛く、涙もたくさん流しました。そんな中、NYUのナースたちが本当に優しい人たちばかりで救われました。特に帝王切開から術後まで担当してくれたナースの素晴らしさは筆舌しがたいほどで、今でも顔と名前をはっきりと覚えていますし、一生忘れないと思います。NYUを選んでよかったと心から思えました。

4日後に帰宅したその日、傷の痛みもそっちのけで、早速タルトを焼きました。以前もレシピを紹介したベジタブルタルトです。そのタルトの美味しかったことと言ったら!