アメリカンパイ生地の黄金比ができるまでのプロセスとレシピ」を投稿して以来、これまでにいくつかのパイレシピを紹介してきました。生地もフィリングもそれぞれかなり研究して、より良いものを作るために努力を重ねてきましたが、これまで手付かずだったのが、パイ皿。使う材料や配分によってパイの仕上がりが変わってくるのは当然ですが、同じようにパイ皿の種類も出来栄えを左右するとのことで、読んだり聞いたりして頭ではわかっていたものの、実際に試したことはありませんでした。

Food&WineEpicuriousNY TimesMartha Stewartなど、多くのフード関連媒体がパイプレートの比較を行っていますが、それぞれの比較結果にかなり差があるのがわかります。テスト環境によって違ったり、パイの種類などでも向き不向きのパイ皿があるようで、やはり自分で試すべきだと思いました。

上記の記事を読んだ上で、実際に使い比べしてみる前にわかったことをまとめてみます。

まずパイ皿は、ガラス製、セラミック製、金属製の3つに大きく分かれます。

ガラス製パイ皿

良い点
・ガラスが透明なので、側面や底の生地の焼け具合がよく見える
・熱伝導率が低い分、全体が均等に火が通りやすい
・価格が低め

悪い点
・生地が焼き縮みしやすい
・激しい温度差による熱割れの可能性がある

セラミック製パイ皿

良い点
・見た目が良く、そのままサーブできる
・熱伝導率が低い分、全体が均等に火が通りやすい

悪い点
・ものによってセラミックの厚さが違うため、焼き時間が読みづらい
・激しい温度差による熱割れの可能性がある
・価格が高め

金属製パイ皿(主にアルミニウムやスチール)

良い点
・熱伝導率が高いので、効率よく焼ける
・割れない
・価格が低め

悪い点
・熱伝導率が高い分、気をつけないと焼けすぎてしまう
・ノンスティックの場合、コーティングを剥がしてしまうため直接ナイフでスライスできない
・ノンスティックでない場合、パイがプレートにひっつきやすく、洗うのが大変

ちなみに私が普段使っているのはFat Daddio’sのアルミニウムパイプレート(6.5インチ/16.5cm)。これには理由が2つあって、まず1つ目はサイズ。アメリカのパイは一般的に9インチ(約23cm)が標準サイズであるため、手に入りやすいパイプレートもこのサイズ。我が家には大きすぎるため、小さいパイプレートを探したところ、一番簡単に見つかったのがアルミ製でした。

2つ目の理由が、熱割れ問題。「パイのデザインの作り方」でも触れましたが、パイの上生地のデザインをきれいに焼き上げるために必要なのが、焼く前に冷凍庫で冷やすこと。そこからすぐオーブンに入れるのですが、この激しい温度差が、ガラスやセラミックの熱割れを起こす可能性があるため、その心配のない金属製を使っています。

ディナーパーティ用など、大きめのサイズを作る際には、Pyrexのガラス製(9インチ/23cm)を使用しています。

そして今回検証をする上で試したパイ皿が以下の4つ。

左からガラス、セラミック、アルミ、キャストアイアン

(写真左から)

1. Harioの耐熱ガラス製パイ皿

アメリカで恐らく最も使われているパイプレートのPyrexですら、9インチより小さいサイズを販売していないため、いろいろ探した挙げ句見つけたのが日本メーカーHarioのガラスパイ皿です。
内側の端から端まで:16.2cm
高さ:3cm

2. Forward Potteryのセラミックパイプレート

セラミック製も小さいサイズがなかなか見つりませんでしたが、Etsyで手作り陶器の美しいパイプレートが見つかりました。
内側の端から端まで:16.5cm
高さ:3.5cm

3. Fat Daddio’sのアルミニウムパイプレート

これまで使用してきたものです。
内側の端から端まで:16.5cm
高さ:3cm

4. LODGEのキャストアイアン・スキレット

パイプレートとしては一般的ではありませんが、家にちょうどいいサイズがあったのでコンテストに参加。
内側の端から端まで:16cm
高さ:3.5cm

前述の通り、作るパイの種類によってパイプレートそれぞれに向き不向きがありますが、今回は私が最もよく作るアップルパイのレシピで実験をしてみました。3. Fat Daddio’sのアルミニウムパイプレート4. LODGEのキャストアイアン・スキレットはレシピ通り焼く直前まで15分冷凍庫で冷やし、1. Harioの耐熱ガラス製パイ皿2. Forward Potteryのセラミックパイプレートに関しては、注意書きにあった通り、熱割れを起こさないために冷凍庫ではなく冷蔵庫で15分冷やしてからオーブンに入れました。

結果

その前に1点注意書きです。結果内容に焼き加減の差について触れていますが、もしかしたら、4つを同時にオーブンで焼いたため、オーブン内の位置によって温度差があった可能性があります。公平なジャッジができなく、これに後から気付いて後悔しましたが、とりあえず今回はこのまま結果として残し、また別の機会に再度チャレンジしようと思います。

1. Harioの耐熱ガラス製パイ皿

良かった点
・確かに側面や底の焼き具合が確認できるのは便利
・焼き縮みは特に見られなかった
・生地がプレートにひっつかないので、スライスしたパイをきれいに取り出すことができた
・縁が平で幅広いので、上生地をデザインする際にはいい

悪かった点
・熱伝導率が低いためか、他と同じ時間だけ焼いただけでは焼きが足りず、生地のさくっとした食感も足りなかった
・なぜかりんごの水分がたくさん出てしまい、底生地がべちゃっとしてしまった
・冷凍庫で冷やせなかった分、上生地の模様も少しぼんやりとしてしまった

2. Forward Potteryのセラミックパイプレート

良かった点
・ガラスと同様、熱伝導率が低いはずだが、同じ時間でもかなりしっかりと焼け、生地もさくっとした仕上がりになった
・りんごにもしっかりと火が通っていながらも、余分な水分が一切出ていなかった
・生地がプレートにひっつかないので、スライスしたパイをきれいに取り出すことができた
・冷凍庫で冷やせなかった割りに、上生地の模様もしっかりと残った
・他よりも高さがあるため、りんごをたっぷりと入れられた

悪かった点
・上生地をいろいろデザインしたいので、縁が平になっている方が良い

3. Fat Daddio’sのアルミニウムパイプレート

良かった点
・熱伝導率が高いせいか、生地はさくっとした仕上がりになった
・縁が平なので、上生地をデザインする際にはいい

悪かった点
・熱伝導率が高いはずだが、りんごの火の通り具合が最も低かった。
・セラミックやスキレットに比べると、りんごの水分が若干出てしまった
・生地がプレートにひっつきやすく、スライスしたパイをきれいに取り出すことができない

4. LODGEのキャストアイアン・スキレット

良かった点
・熱伝導率が高いせいか、しっかりと焼け、生地もさくっとした仕上がりになった
・りんごにもしっかりと火が通っていながらも、余分な水分がほとんど出ていなかった
・生地がプレートにひっつかないので、スライスしたパイをきれいに取り出すことができた
・冷凍庫で冷やせたので、上生地の模様がしっかりと残った

悪かった点
・上生地をいろいろデザインしたいので、縁が平になっている方が良い

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というわけで、オーブンの温度差問題を考慮しつつも、これまで当然のように使ってきたアルミニウムのパイプレートが、他と比べるとあまりよくない結果となり、衝撃的でした。

さらには、パイプレートとしてはあまり一般的ではないキャストアイアンが大健闘をしたり、セラミックもかなりいい仕事をしてくれました。キャストアイアンが良かったので調べてみると、LODGEではありませんがパイプレートとして作られて縁も平らになっているものも発見したので、購入を検討しています。

また再度チャレンジできた時には内容をアップデートしようと思います。

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