ソーシャルデザイナーとして社会のために何ができるのか、改めて確認すべく、ソーシャルデザインとは何なのかを再考しています。【前編】に引き続き、まずは8つに分けて考えたソーシャルデザインの種類のうち、残りの4つについて紹介します。

5. デザイン思考のブレーンとして参加

「3. 政策デザイン」とも重なる部分がありますが、デザイナーは、直接デザインと関係しているか否かに関わらず、社会的課題に取り組むチームのメンバーにブレーンとして参加を求められるようになりました。これは、デザインという専門職が、戦略的なクリエイティブ思考によって成立しているということが確立したためだと思います。

デザイン思考で型にはまらない自由なアプローチでアイデアを提案することもあれば、デザイナーではないチームメンバーにアイデア出しをしてもらうことを促す役目として参加できるかもしれません。または、創造的な視点で課題そのものを提起し、デザイナー自身が中心となったプロジェクトチームを組むこともできるでしょう。

6. 全てのデザインは、社会生活を促進させたり持続させるための方法の1つ

「1. 困っている人たちにデザインという形で手を差し伸べるしくみ」で、社会的ハンディキャップを抱えた人々が生活するために必要なモノやコトをデザインすることをソーシャルデザインの1つに挙げましたが、そもそもデザインというのは、それが商品やサービスであろうとコミュニケーションであろうと、はたまたシステムであろうと政策であろうと、アート作品とは違ってそこには必ず「役目」があります。その「役目」とは、私たち人間の毎日の活動をより効率的に、効果的に、または魅力的にすることであって、デザインは社会生活を促進させたり持続させる働きをします。つまり全てのデザインされたモノやコトは、ソーシャルデザインと呼べるのかもしれません。

7. デザインは本質的に社会的

何かをデザインをするとき、私たちは少なからず未来を思い描いています。その未来の規模に大小の差はあれど、これから生まれるであろうそのデザインが存在する未来です。その未来は、同じ未来を共有する人々が構成する社会的ネットワークに支えられて初めて実現するものであって、つまりデザインというものは本質的に社会的、全てのデザイナーはソーシャルデザイナーと呼べるのではないかと思っています。

8. 未来のソーシャルデザイナーへの啓蒙活動

ソーシャルデザイナーの一員としてできるもう1つの役目は、未来のソーシャルデザイナーを育てること。

クリエイティブ思考というのは、デザインの学位を持っている人やデザインを生業としている人だけが持つ特別な能力ではありません。創造力というのは、誰もが子どもの頃に必ず持っているもの。これが学校教育や社会的環境によってクリエイティブであることを阻害されたり、大人になるにつれて自分には関係のないものと思い込んでしまっているのです。時代は目まぐるしく変化し、予測不可能な未来に直面している今、より良い社会を作るための問題解決をデザイナーと呼ばれる選ばれし人だけに任せている余裕はありません。

未来を担う子どもたちに、クリエイティブであり続けることの大切さ、そしてクリエイティブな思考によってさまざまな社会問題を解決する手段を生み出すことが可能であること、これを伝えていくことが、ソーシャルデザイナーとして社会のためにできる大事な仕事なのです。

まとめ

デザインの究極の目的は、良い社会づくりに貢献することだと思っています。

デザインとは、製品や広告など、目に見えるものを主に指してきました。それが今や、社会活動をはじめ、システムや政策など、目に見えないものを形成する上での思考プロセスを表す言葉として使われるようになりました。つまり、人々がより良い暮らしをするための社会づくりを構想する思考プロセスです。

ソーシャルデザインは、すでに起こっている社会問題を解決するのと同時に、どのような社会にしたいかという根本的な再考、そしてその実現のために人々を動かすプロジェクトを作り出し、人間の社会システムをアップデートすることまで求められているように思います。

とりあえずは、自分の力で誰かの、またはどこかのコミュニティの暮らしをより良いものにしているという自覚を持って、目の前にある課題をデザイン思考で解決するということを意識することが大切なのかもしれません。