外出禁止となったニューヨークで、人々がいまだかつてなく挑んでいるのが料理。
今は、美味しいものを食べることだけが1日の唯一の楽しみ、という人も少なくなく、また皮肉にも、仕事が減って時間を持て余している人も増えたため、料理をしないことで有名なニューヨーカーたちがこぞって料理をし、またその楽しみを見出しています。
これまで料理はほとんどしたことがなかったという私の友人も、この自宅待機によって料理に目覚め、「自分で言うのもなんだけど、自分がこんなに料理上手だとは知らなかったわ!」と嬉しそうに話していました。私がインスタグラムに料理の写真を載せる気持ちがわかるとも話していました。実際、ここ数週間でインスタグラムのフィードに手料理の写真がうんと増えました。
中でも特に人気なのがパン作りや焼き菓子作りで、スーパーなどに行ってもかなりの確率で品切れになっているのが小麦粉。あまりに手に入らないので、NYタイムズでも、小麦粉を使わない焼き菓子のレシピや、種類の違う小麦粉の代替方法などを紹介しています。
料理という意味では我が家ではそれほど変化はありませんが、食材の買い物の仕方は大きく変わりました。これまではほぼ毎日買い物に行っていましたが、今はスーパーに行くのも、大袈裟かもしれませんが、命がけです。
スーパーに行く回数をできるだけ減らすため、1週間ごとに朝昼晩の献立を予め決め、まとめて買い出しに行っています。まず出かける前にテーブルに新聞紙を広げておき、マスクとゴム手袋はもちろん、殺菌ワイプを持ち歩いてカートなどは使用前に殺菌、帰宅後は広げた新聞の上に食材を並べ、全て水洗いや殺菌をしてからそれぞれの箇所に片付けます。買い物も一苦労ですが、こんな状況下でも新鮮な食材を手に入れることができるのは、エッセンシャルワーカーの人たちのおかげ。自分たちにできることを精一杯することが、彼らの命を守ることにつながります。
また、料理とは直接関係ありませんが、自宅待機中にしていることといえばコロナ日録。これは、スーパーに行った日、その行先、ネットで注文したものを受け取った日、など、少しでも感染する可能性がある事柄を記録することで、万が一自分が感染した際、感染経路解明へ役に立つ情報に少しでもなるかもという思いでつけています。
さて、今日紹介するレシピは、イタリアン・ウェディング・スープ。鶏団子と野菜が入ったのイタリア系アメリカ料理です。
このスープの元となったのは、イタリアのミネストラ・マリタータ。ナポリの伝統料理で、クリスマスやイースターなどの祭日に作られる、特別な料理です。本場では、エスカロールを含む数種類の野菜と、お肉は豚足や豚スペアリブ、またはソーセージなどを使うことが一般的。「ウェディング」という名前から、結婚式で食べる料理だと勘違いされやすいですが、そうではなく、お肉と野菜がうまく馴染み合う=結婚する、という意味合いから生まれた名前です。
このミネストラ・マリタータが、アメリカではイタリアン・ウェディング・スープと呼ばれ、手に入りにくい野菜は省略され、お肉もより食べやすいチキンミートボールが一般的になりました。美味しいのはもちろん、1品でたんぱく質と野菜が一緒に取れるため、アメリカ一般家庭で人気の料理です。
スープに使用する野菜は、ほうれん草やケール、キャベツなどもありますが、我が家ではもっぱらエスカロール。エンダイブの1種で、程よい苦味が美味しい野菜です。生でサラダにしたり、蒸し煮にして付け合わせにしたり、スープに入れたりと様々な使い方ができ、我が家でも最もよく食べる野菜の1つです。
このスープだけで大満足ですが、スープにご飯やパスタを足せば、より食べごたえのある食事になります。
栄養バランスの取れたこのスープで、外出自粛中のこの時期を美味しく、健康的にお過ごしください。
[Photos and styling by Hitomi Watanabe Deluca]