ニューヨークがコロナウイルスのエピセンターとなり、街が閉鎖状態となった3月から9ヶ月が過ぎました。人々の生活もニューヨークの街並みも激変し、ロックダウン直後から『新型コロナウイルスが直撃したニューヨーク』『新型コロナウイルス感染者が急増するニューヨークの人たちの暮らし』『新型コロナで外出禁止中の1日』『ポスト・コロナの新しい世界について考える』と4週連続で、エピセンターの様子などを書きました。2020年も終わりに近づき、新しいノーマルに順応した9ヶ月後の現在のニューヨークの様子を紹介しようと思います。

マスク

ニューヨーカーのマスク率はかなり高いです。これだけ多様な人種、文化、思想、宗教などが集まる中で、これだけ皆が同じルールを守れているのは本当にすごいこと。アメリカ国内では、トランプ大統領の影響もあり特に共和党支持者や地方のマスク率は低い傾向があり、マスクが原因の事件も多く見られました。NYでは、例えばマスクを顎に下げたまま歩道を歩いている人でも、対向者に気づくとすれ違う前にマスクをつけるなど、周りを気遣う姿勢が日常的に垣間見ることができます。なおマスクの種類ですが、使い捨てマスクよりも布マスク率の方が高いように見受けられ、これは、主に環境への配慮によるものだと思われます。

レストラン

3月に、テイクアウト&デリバリー以外のレストランの営業が禁止となりました。4ヶ月後の7月から屋外での飲食が許可され、9月からは収容客数25%に制限という条件付きで店内飲食が解禁されましたが、第2波を受けて明日12日から店内飲食の再度禁止が決定しています。NY州レストラン協会の9月の調査によると、州内の3分の2のレストランが、何らかの救済援助を受けなければ今年中に閉店する可能性があると答えています。

冬に向けて、引き続き屋外営業を続けるために歩道や道路には、それぞれのレストランが趣向を凝らした「ほぼ屋内」屋外ダイニングルームが構築されています。サンルーム風、ビニールハウス風、ロッジ風、イグルー風、ゲル風など、その形やデザインはさまざま。中には屋外ダイニングルームを設置するために$120,000(約1,200万円)をも費やしたレストランもあるそうです。

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店内飲食の際は、ほとんどのレストランで検温が実施され、接触者追跡のために住所や電話番号などの情報を紙または専用ウェブサイトフォームへの記入を求められます。接触を極力減らすため、紙のメニューの代わりにQRコードを読み取ってそれぞれのスマホで見る方式も一般的になりました。支払いもQRコード先のウェブサイト上でできるところも増えています。またレストラン救済のため、飲食代から最大10%が上乗せすることが許可されました。

美術館、シアター

美術館は8月から再開し、収容客数25%という制限の中、ほとんどが入場の日時を決めた前売り券を導入しています。他の来場客との距離が、ソーシャルディスタンシングの6フィート未満になるとバイブレートで知らせてくれるデバイスを来場客に配布している美術館などもあります。

ブロードウェイのミュージカルは2021年5月までキャンセル、メトロポリタンオペラは2020–21シーズン全体がキャンセル、ニューヨーク・フィルハーモニックも2021年6月13日まで全コンサートがキャンセルとなっています。

オフィス

NPOのPartnership for NYCが行った調査によると、マンハッタンのオフィスワーカーのうち、オフィスに戻っている人は10月の時点でわずか10%。今年中にオフィスに戻ると予想されているのは15%、そして48%が2021年の7月までに戻ると予想されています。戻ったとしても、そのうちの約4割はオフィス勤務とリモートワークのハイブリッドになると見込まれているとのことです。

学校

3月のロックダウンと共に閉鎖となった公立学校は、9月の新学期開始も遅延し、同月下旬にようやく再開しました。クラスを少数グループに分け、週1-3回の登校とリモートクラスをブレンドした形で慎重に行われた結果、クラスターなど発生することなく順調に進んでいました。しかし市内の感染率増加を受けて11月に再度閉鎖、今月12月に小学校だけが再開しています。学校では毎週、無作為に選んだ生徒やスタッフにPCR検査を行っており、学校別の検査結果をウェブサイトで確認することができます。

地下鉄

パンデミック以前の平日の3分の1の乗車率に落ち込んでいる地下鉄は、政府からの120億ドルの援助がない限り、バスと地下鉄のサービスを40%削減すると警告。また暴力事件が相次いでおり、治安悪化が懸念されています。

ストリート

閉鎖直後はこれまでに見たことのないほど交通量が減って道路も閑散としていましたが、今ではパンデミック以前と同じかそれ以上の渋滞が発生しています。これは、社会的距離を保つための動きとして歩行者天国が市内いたるところに設けられたことと、交通警察による誘導が減少したためだと考えられます。同時に、公共交通機関を避け自転車を利用する人が急増し、自転車店では売り切れが続出したほど。コロナ禍によるホームレスの増加も危惧されており、その数は記録を更新しています。

不動産

現在マンハッタンの空室は16,000を超え、これは記録上最高であり、去年同時期のなんと3倍。空室率は6%を超え、6ヶ月連続で上昇しています。家賃平均もここ10年で最も低く、さらに平均2ヶ月のフリーレントがスタンダードになっています。感染への警戒感から郊外に移った人、職を失って高い家賃が払えなくなった人、リモートワークにより生活費の高いマンハッタンにいる必要がなくなった人など理由はそれぞれですが、郊外の住宅需要と価格は上昇しているのと同時に、これまでアパート暮らしだった人が突然郊外の一軒家に住み始めたことで、想像以上のメンテナンスの大変さと維持費の高さに嘆いている人も多いのだそう。

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このように色々な方面で厳しい状態が続いていますが、パンデミック以降よく感じるのが、ニューヨーカーが以前よりも優しく穏やかになったこと。NYの人は何かと無愛想だったり不機嫌な人が多くて有名ですが、通りを歩いている時にすれ違う人だったり、運転中の横の車の運転手だったり、お店の店員さんだったり、日常の何気ない暮らしの中で起こる何気ない瞬間で、明らかに変化を感じています。それは、生死に関わる未曾有の世界を経験したことで価値観が変わったからなのか、単純に時間にゆとりができて心にも余裕ができたからなのかはわかりませんが、大変な時ほど他人を思いやることができるニューヨーカーらしさが現れていて、この街の良さを再確認しているのです。