「作る」女性たちシリーズの第2弾。水彩画でカスタムアルファベットThe Letter Nestを作るアーティストのサリー・キング・マクブライド(Sally King McBride)を紹介します。
サリーとは、1年半ほど前に当時息子が通っていたプリスクールのペアレンツ交流会で出会いました。同じ学校でもキャンパスが違ったのでその時が初対面だったのですが、すっかり意気投合したのを今でもよく覚えています。
彼女が描くアルファベットは、子供のためとあって、お花や動物、サーカスに工事現場など子供が好きなモチーフを文字にアレンジしたものが中心。繊細で細密なタッチの水彩、クリエイティブな発想の文字のデザイン、そして愛らしいイラストが絶妙で、うっとりとしてしまいます。最近はパリやシノワズリがテーマのアルファベットも発表しており、大人の私でも思わず欲しくなってしまうアートワークです。
以前インスタグラムでもお知らせしましたが、私の作る焼き菓子をモチーフにした「H for Hitomi’s Handpies」を、デザートアルファベットの一部として作ってくださいました。写真は我が家に飾ってあるそのポスターです。ウェブサイトからは、テーマ毎のA to Zポスターのほか、子供の名前にカスタムしたプリントもオーダーすることができます。(日本を含む海外への発送も行っているそうです)
彼女も、小さなお子さんが2人いるお母さんであり、クリエイター。仕事と家庭の両立であったり、クリエイティブなプロセスに興味があったので、今回はインタビュー形式で答えてもらいました。
1. ご自身でビジネスを始める以前の経歴について教えてください。また、その経験は現在のビジネスにどのような影響を与えていますか?
大学卒業後すぐにニューヨークのメトロポリタン美術館へ就職し、10年以上勤めました。アメリカン・ウィング(※1)、館長室、そして最終的には近現代美術のイベントやコミュニケーションの仕事をしました。美術史への愛を深め、偉大な芸術作品の近くで時間を過ごし、才能あるスタッフとの素晴らしい関係を築いたことが、The Letter Nestを立ち上げる原動力となりました。
※1 メトロポリタン美術館内の、アメリカ近代美術を展示するギャラリー
2. 会社を立ち上げたばかりの頃に直面した最大の課題は何ですか?また、それをどのように克服しましたか?
会社の立ち上げと次男の誕生とが重なってしまい、出産直後の女性に襲う母としての自然な孤独感と、起業初期の孤独感を同時に味わったことです。技術的なことでいうと、私は今より絵を描くのが遅く、あまり思い切って絵を描くことができなかったのですが、2年経った今では、より自信と決断力を持って絵を描くことができるようになりました。
3. 2人の男の子のお母さんですが、ビジネスを始めることは、ご家族にどのような影響を与えましたか?また、仕事と家庭生活のバランスはどうやって取っていますか?
仕事と家庭生活のバランスは、全ての親が常に葛藤していることであり、自分にとっても絶賛進行中の課題です!
私は息子たちに、一生懸命働き、人を引きつけるほど素晴らしい作品を作り、困難な状況でも勇気を持って取り組むというお手本を示せることを誇りに思っています。彼らはまた、私が新しいアルファベットの草稿を作成しているときには、私の最大のマーケットテスター。私の仕事に対して夢中になる息子たちの姿が私を前進させてくれています。
4. インスピレーションはどこから得ますか?また、あなたのムードボードに常にあるものは何ですか?
子供の本のイラストレーションは、私の芸術的な北極星です。Beth Krommes、Gabriella Barouch、Chris Van Allsburg、Mae Besomなどのアーティストは、私を喜ばせ、インスピレーションを与えてくれます。デジタルマーケティングやオンラインでの美学を学ぶために、デザインやファッションブランドもお手本にしています。HI(NY)はもちろん(!)、La Ligne、Love Shack Fancy、ASHA by Ashley McCormickなど。
5. 仕事場と使用している道具について教えてください。
グリニッチ・ビレッジ(※1)に面した窓のある角部屋のベッドルームから作業をしていることがほとんどです。
絵の具に関しては、私は古い習慣から抜け出せないタイプ。高校時代に水彩画を習っていたときに使用していたのが、サンクトペテルブルグの36色のボックスセットで、今でも同じものを使っています。筆については、特定のブランドではなく、目で見てサイズを判断して買っています。現在は、ウォッシュ(※2)にはプリンストンのロングラウンドのサイズ8、細密表現にはロバートシモンズのセーブルラウンドのサイズ1を愛用しています。
※1 マンハッタンのダウンタウンにある地区の名称
※2 多量の水でといた絵の具で塗りつぶしていく水彩画の技法
6. アーティストとしてのあなたの典型的な一日について教えてください。
1日とて同じ日はありませんが、私の戦略としては、その時描いている絵と絵の具をセットした状態で机に置いておくことで、育児やメール、注文処理(またはコンサルティングの仕事)の合間に10分でも絵を描く時間を確保できるようにしていることです。
7. 新型コロナウイルスの流行は、短期的、そして長期的にどのようにビジネスに影響を与えていますか?
短期的には、家にいなければならないということで、お客様が、よりウォールアートを購入しやすい状況になりました。よって、ウェブサイトからの注文は(嬉しいことに)ほとんど落ち込んでいないことがわかりました。長期的には、デジタル・チャネルが私のビジネスを維持し続けていくための鍵だと思うので、実用的な面と美的な面の両方から、その存在感を高める方法を常に考えています。
8. 尊敬する女性について教えてください。
教育分野でのプロフェッショナルとしての成功、家族や友人への愛情、そして何をするにしても熱意を持って取り組む姿勢から、母は私にとって素晴らしいロールモデルです。さらに彼女の二人の姉妹、つまり私の叔母たちとも同じように親しくしており、私たちには共通する性質や関心事があります。特に、絵本作家であるサラ叔母は、クリエイティブのプロとしての道を示し、それを幸運にも私は幼い頃から側で目の当たりにすることができました。
9. あなたにとって成功とは何ですか?
創造的な自律性、意思決定の権限、そして自分のスケジュールをマスターすること!です。
10. アートへの情熱を仕事にしたいと思っている他のアーティストに何かアドバイスがありますか?
自分のポートフォリオに明確なブランドを形成することをお勧めします。会社を始める前の何年もの間、私は様々なクライアントから肖像画やランドスケープ画の依頼を受けていましたが、私の作品は、一貫性のあるブランドを形成したときに、はるかに認知されるようになりました。それがThe Letter Nestです。最初から非常に具体的でニッチな商品やアイデアでスタートすることには利点があります。自分を際立たせるものを明確にして、それを土台にしていくことが大事です。
「作る」女性たちシリーズ