メトロポリタン・オペラを最高に楽しむ12のコツという記事を2017年書いて以来、オペラシーズンが始まる直前に毎年そのシーズンのおすすめオペラを紹介しています。

2019-20シーズンはコロナの影響で3月以降の公演が中止になり、去年の2020-21シーズンは開幕を遅らせて12月31日に始まる予定で、私も例年通りおすすめオペラを紹介しました。がしかし、投稿した3日後にシーズン全演目の中止が発表。元々財政難が伝えられていたメットにとって、苦渋の決断でした。

中止の発表とともに公開されたのが、2021–22シーズンの演目。その後ワクチン接種も普及し、ようやく晴れて明日からシーズンが始まります。

演者、オーケストラメンバー、スタッフ、観客の全てに、ワクチン接種が義務付けられており、入場の際には証明書の提示が求められます。現在ワクチン接種ができない12歳以下の子供は、入場が認められていません。観客数の削減はないのだそう。

コロナの影響をまだ大きく受けたシーズンではありますが、この喜ばしい開幕に相応しいエキサイティングな演目がたくさん用意されています。

それではこれまでと同様、今シーズンの演目の中から、メトロポリタン・オペラ初心者の方におすすめのオペラと、私が個人的に楽しみにしているオペラをそれぞれ紹介したいと思います。

メトロポリタン・オペラ、今シーズンのおすすめオペラ

音楽、ストーリー、出演歌手、舞台セットなど全てを考慮した上で、今シーズンの演目の中から、メトロポリタン・オペラ初心者の方におすすめのオペラを3つ選びました。

1. ドニゼッティ『ランメルモールのルチア』

ドニゼッティの代表作の1つ。正気を失った花嫁(ルチア)が血まみれになって歌い上げる「狂乱の場」がとても有名です。2007年から使用されてきた、螺旋階段が印象的なジマーマンのプロダクションが一新され、オーストラリア人監督のサイモン・ストーンによるニュープロダクションがお披露目されます。

ドニゼッティ『ランメルモールのルチア』|Image from The Met Opera

2. ガーシュウィン『ポーギーとベス』

2019-20シーズンで、私が楽しみしているオペラの1つとして挙げたのが、この『ポーギーとベス』。アメリカを代表する作曲家、ガーシュウィンによるオペラで、南部の町を舞台にフォークソングを取り入れたアメリカらしい作品です。この年の大ヒット作品となり、メットが急遽公演日を追加したほど。私も実際に鑑賞して、本当に素晴らしかったので今シーズンのおすすめオペラに選びました。アリア「サマータイム」は誰もが知る名曲です。

ガーシュウィン『ポーギーとベス』|Image from The Met Opera

3. ヴェルディ『リゴレット』

ヴェルディの代表作の1つで、アリア「女は気まぐれ」があまりに有名です。16世紀のストーリーに対して、舞台がラスベガスとなった前回のプロダクションも話題になりましたが、今シーズンのニュープロダクションは、1920年代のヨーロッパが舞台。アールデコのデザインが楽しめるのだそう。リゴレット役は、ヴェルディの演目に定評のあるケルシー。

ヴェルディ『リゴレット』|Image from The Met Opera

私が今シーズン楽しみにしているオペラ

1. シュトラウス『ナクソス島のアリアドネ』

知名度も人気度もそれほどは高くない演目ですが、私にとって思い入れのあるオペラ。2005年に、私が初めてメトロポリタン・オペラで鑑賞したのがこの演目でした。どのオペラを選べばいいのかわからなかったのでなんとなく選びましたが、それ以降100近くのオペラを鑑賞してきて思うのは、全くの初心者の1つ目の演目としては向いていないかな、ということです。その経験を元に、メトロポリタン・オペラを最高に楽しむ12のコツを書こうと思いました。

シュトラウス『ナクソス島のアリアドネ』|Image from The Met Opera

2. ブランチャード『Fire Shut Up in My Bones』

メット史上初、黒人作曲家によるオペラとして、今シーズン最も注目されている演目です。記念すべき明日の開幕演目としても選ばれています。ブランチャードは、グラミー賞を受賞しているジャズ作曲家。主人公のトラウマと苦難に満ちた人生が綴られたストーリーで、キャストも全て黒人で編成されています。

ブランチャード『Fire Shut Up in My Bones』|Image from The Met Opera

3. オーコイン『ユーリディシ(エウリディーチェ)』

弱冠31歳のオペラ界の期待の新星、オーコインの作曲による演目。題材であるギリシャ神話のオルフェオとエウリディーチェの物語は、グルックの名作を含むたくさんのオペラのテーマとされてきましたが、オーコインの作品は、オルフェオではなくエウリディーチェの視点から、という興味深い構成になっています。4歳の頃には作曲を始め、オペラを聞いてイタリア語をネイティブ並みに習得するなど、幼い頃からその才能を発揮していたオーコイン。今後の活躍が期待されます。

オーコイン『ユーリディシ(エウリディーチェ)』|Image from The Met Opera