フィリップ・グラス『アクナーテン』| Image from The Met

今年もオペラのシーズンがやってきました。メトロポリタン・オペラが明日9月23日から始まります。

2017-18シーズン直前に、メトロポリタン・オペラを最高に楽しむ12のコツという記事を書きました。それ以来、毎年この時期に、そのシーズンのおすすめオペラを紹介しています。

40年ものあいだ音楽監督として務めてきたジェームズ・レヴァインがスキャンダルによって解雇され、2018-19シーズンでは、カナダ人指揮者のヤニック・ネゼ=セガンが新しく音楽監督として就任しました。今年は大スターのプラシド・ドミンゴがやはりスキャンダルで、彼が総合監督を務めるLAオペラはドミンゴなしでオープニングガラが先週行われるという、今年もオペラ界は波乱の幕開けとなっています。なおメトロポリタンオペラは、ドミンゴについての判断をまだしかねているとのことで、現在のところ予定通りドミンゴが出演することになっています。

それではこれまでと同様、今シーズンの演目の中から、メトロポリタン・オペラ初心者の方におすすめのオペラと、私が個人的に楽しみにしているオペラをそれぞれ5つずつ紹介したいと思います。

50年代のコニーアイランドが舞台のモーツァルト『コジ・ファン・トゥッテ』| Image from The Met

メトロポリタン・オペラ、今シーズンのおすすめオペラ

音楽、ストーリー、出演歌手、舞台セットなど全てを考慮した上で、今シーズンの演目の中から、メトロポリタン・オペラ初心者の方におすすめのオペラを5つ選びました。

1. ワーグナー『さまよえるオランダ人』

幽霊船を中心にストーリーが展開する、ワーグナーの有名なオペラの1つ。大御所ブリン・ターフェルが7年ぶりに出演、そしてやはり大御所のヴァレリー・ゲルギエフが指揮をとるということで話題のオペラです。また、2013年の『パルジファル』で幻想的なセットを作り上げたフランソワ・ジラールによるニュープロダクションも見所です。序曲が有名。

2. ヴェルディ『マクベス』

シェイクスピアの戯曲を基に書かれたヴェルディのオペラ。大人気ソプラノネトレプコとテノールドミンゴ(前述の通り、出演予定に変更がなければ)のデュオが注目されています。

3. グルック『オルフェオとエウリディーチェ』

グルックのオペラの中で最も有名で、馴染みのあるメロディも多いので非常に聴きやすい、壮大な愛を描くオペラ。間奏曲の『Reigen seliger Geister(精霊の踊り)』やアリア『Che farò senza Euridice(エウリディーチェを失って)』が有名です。個人的にはオルフェオ役のJamie Bartonが一推し。

4. モーツァルト『コジ・ファン・トゥッテ』

新しいセットが、50年代のコニーアイランドが舞台ということで話題になった『コジ・ファン・トゥッテ』が今年も上演されます。4人の男女の恋愛喜劇で、揺れ動く感情をコミカルに、テンポよく表現されている楽しいオペラ。重唱が多いのが特徴的です。個人的にはGuglielmo役のLuca Pisaroniが一推し。

5. シュトラウス『ばらの騎士』

シュトラウスの代表作の1つ、『ばらの騎士』。美しい音楽と切ない物語で、私自身大好きなオペラの1つです。序曲や、劇中で出てくるワルツ最後の三重唱からエンディングにかけての音楽など、素晴らしい音楽の連続です。ロバート・カーセンによる壮大なプロダクションも見所。

 

シュトラウス『ばらの騎士』| Image from The Met
ガーシュウィン『ポーギーとベス』| Image from The Met

私が今シーズン楽しみにしているオペラ

1. ガーシュウィン『ポーギーとベス』

アメリカを代表する作曲家、ガーシュウィンによるオペラ。「フォーク・オペラ」とガーシュウィン自ら呼んだこのオペラは、南部の町を舞台とし、フォークソングを取り入れたアメリカらしい作品です。James Robinsonによるニュープロダクション、そしてポーギー役にはEric Owensということで、非常に楽しみです。

2. ベルク『ヴォツェック』

「動くドローイング」で有名な南アフリカの現代アーティスト、ウィリアム・ケントリッジがセットを手がけることで話題のオペラ。彼はこれまでにもベルクの『ルル』やショスタコーヴィチの『鼻』のセットも担当し、彼のアートとオペラを同時に楽しめるということで人気です。ヴォツェック役には私も大好きなスウェーデン人バリトンのPeter Matteiが。

3. ヘンデル『アグリッピナ』

大好きなメゾ・ソプラノ、Joyce DiDonatoがタイトルロールを務めるというだけで購入を決めたオペラですが、メットでの新作が何年も続いているマクヴィカーによるニュープロダクションということで、セットデザインも楽しみです。

4. フィリップ・グラス『アクナーテン』

現役のアメリカ人作曲家、フィリップ・グラスによるオペラ。古代エジプロのファラオ、イクナートンを題材にしたこの作品は、メトロポリタンでは今回初めての上演となります。写真や映像を見る限り、セットや衣装が非常にモダンで幻想的で、グラスの音楽との相性に期待をしています。

5. マスネ『ウェルテル』

ゲーテの代表作『若きウェルテルの悩み』を題材とした、マスネの代表作の1つ。音楽監督のネゼ=セガン自ら指揮をとり、タイトルロールは人気テノールPiotr Beczalaが、そして彼が惹かれるシャルロット役をJoyce DiDonatoが演じます。

 

ウィリアム・ケントリッジのドローイングが印象的なのベルク『ヴォツェック』| Image from The Met

 

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